衝撃 : 11 / 17





『第一レーン、辻本 彰太くーん』


名前を呼ばれた彰太は、わああ、という男子生徒集団の野太い歓声の中、一歩前に出て周囲に大きく手を振った。




『第二レーン、鳴海 春くーん』

続いて名前を呼ばれたのはハルくん。ハルくんは投げキッスなんかかまして、1年生からブーイングが出ていた。




…俺には真似できないな。

二人の堂々たる振る舞いには素直に感心した。昔から、人前に出たり、目立つようなことは得意じゃない。何かに没頭していれば、観客がいても気にならないのだけれど。例えばさっきの徒競走。走ることに集中していたから何ともなかったが、こうやって意図的に周囲に自分をさらけだすのは苦手だ。


全員が名前を呼ばれ、位置につく。


放送委員長が息を大きく吸い込むのが、スピーカー越しに聞こえた。







『…位置について、ドン!』



同時、歓声が轟く。

陸上部員なら委員長に抗議でもしかねないようなスタートの合図に、選手の誰もが転げそうになりながら走り出した。




『さー始まりましたームチャブリレースぅ。今年も体育委員が張り切って指令を考えてくれましたぁ。』



放送委員長の気の抜けたアナウンスをBGMに、全選手、一斉に体育委員とじゃんけんする。負けたのであろう選手は粉入りの箱へ、勝ったのであろう選手は一目散にスタンドマイクへ駆けていった。





bkm


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