▼ 暴走 : 5 / 14
…あ、そういえば。
「…彰太、うちの学校で、慶護さん、って人、知らない?」
朝の話で思い出した。
特寮組にも馴染み深く、神野さんの唯一の友達らしいその人物。ということは、この学校ではなかなかの有名人なのではないかと思う。
しかし、その人を見かけたこともなく(顔を知らないからかもしれないけど)、その名前も、特に耳に覚えはないのだけど。
「…あー、それ、長く休んでた人かも」
彰太は何故か、苦い顔で言った。
そういえば、神野さんもそんなことを言ってた気がする。
「なんか父親の?仕事の手伝いだったか何だったかで?らしいよ?」
疑問符ばかりのあやふやな答えだけど、それなら納得。
うちの学校、脳ミソがデキてることはもちろんだけど、親が企業の社長だとか、お国のお偉いさんだとか、オプション付の生徒も多く"家の都合"で休む場合も珍しいことではないらしい。
「彰太はどうして、その人のこと知ってるの?」
「……先生と、仲良いんだよね」
彰太は、むぅん、と唸った。
彰太が言う「先生」とは、きっと藤高先生のことだろう。
「やたら先生にベタベタするし、俺のこと馬鹿にしたような言い草だし…、俺は好きじゃない。」
神野さんや奏斗くんの話からは、彰太の言うような性格の悪そうな感じはしなかったのだけど。
bkm
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