衝撃 : 2 / 17



『…第四レーン、3年B組─十狩 嵐さーん』

聞き慣れた名前が呼ばれた、その瞬間。


ウォォォオォォオォオ!!!


他の選手の時とは全く比べ物にならないほどの歓声が、右耳から左耳へと駆け抜けていった。嵐くんはそれに応えるように、まるでボディービルのようなポーズを決める。それに対してまた、笑い声や拍手が贈られていた。
こんなにも反応に差違が生じるとは、同じレースの2年の先輩と同級生たちが不憫である。

位置について、用意、の声に合わせ選手が一斉に構える。


パァン。


空砲と同時、飛び出したのは茶色いツンツン頭の嵐くん。完璧なスタートダッシュで周りの選手にハッキリと差を見せつけた。腕の振りも足の運びも素晴らしい、完璧なランニングフォーム。きっと会場の誰もが嵐くんの勝利を確信している。

そんな期待を裏切ることなく、嵐くんは2位との差をぐんぐん広げぶっちぎりの1位でゴールテープを切った。

スタート前の数倍もありそうな大歓声を受け、嵐くんも満足げな顔で自陣の前を某短距離選手みたいに走り回ったりポーズを決めたりして、たいそうご満悦のようだ。



『続いて、第2走―…』

沸き上がる会場に割り入って、淡々としたアナウンスが響く。





『第一レーン 1年A組、藤咲 翔くーん』

呼ばれた名前は自分のもの。
仕方なく手を上げ、一礼する。わああ、とそれなりの歓声が起き面食らった。


bkm


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