▼ 告白10 : 10 / 11
「翔にそんなつもりがないのも、翔が困るのも、分かってたけど。…その、なんつーか、」
「…ヤキモチだ」
唐突にやって来たデジャブに思わず呟く。
彼は顔をしかめて、さらさらの髪をくしゃくしゃにした。
…やば、嬉しいかも。
自然と口角が上がっていく。
「…うるせい」
「…へへ」
「お前も、」
名前、
と言われて、咄嗟に言動を振り返った。
『朔哉!!』
「あ、あれは…!」
自分で思い出して恥ずかしくなった。その瞬間は無我夢中で、何も気にしなかったのに、今ごろになってどんどん顔があつくなっていく。
「…あー、もう」
すると。大きい手がのびてきて。俺の前髪を掻き上げた。
「可愛いな」
また、そのセリフが追い討ちをかける。
うっとりするような低音に、照れたような微笑み。
鷲掴みに、された。
「…や、野郎に可愛いなんて言うなよ」
「可愛いんだもん」
「っ、…だから…!」
「なあ、翔」
俺の言葉を遮って、先輩の顔が近づく。
キス、されるのかと思ったら、唇を素通りして、耳元へ。
「ラブホいきたい」
「…はああ!?い、今そんなトコ行って何するんだよ!」
「何って、ナニでしょう」
…な、何考えてるんだこの人。
恥ずかしくて仕方ないのと、呆れてどうしようもないのでごっちゃになっているというのに。
ずいぶん綺麗に笑うから。
…ちょっと、だけ。
本気にしてもいいなんて、思ってしまった。
bkm
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