▼ 告白9 : 9 / 11
「朔哉!!」
視界の端に、行く人がこちらを振り返る姿が映り込む。
…違う、俺が振り向いてほしいのは、あんたたちじゃなくて。
周りの世界よりもだいぶスローモーションで、彼は見開いた目をこちらに向けた。
1秒ごとに、鼓動は早く、身体は熱くなっていく気がして。
「どっちが楽しい、とか、比べられるワケないじゃん…」
もちろん、特寮組で過ごすのは楽しい。
先輩と二人で過ごすのだってまだ緊張はするけど、もちろん楽しい。
だけどこれらは、比べていいことなんかじゃない。俺にとっては、どちらも同じくらい、大切な時間だから。
…分かっておいて、欲しいことは。
「あんただけだと思ったら、大間違いなんだからな…!」
俺だって。
朔哉のそばにいたい。触れていたい。
恋人に対してそう思わない人なんて、きっといない。
そんな想いを込めて、その瞳を見返した。
「……か、ける」
「別に朔哉より特寮ってワケじゃなくて…」
「…翔」
「おれにはどっちも大事で、朔哉に対しての、その、愛、が足りない、とかじゃなくて、」
「分かってるよ」
弁解に必死で、すぐ目の前に彼がいることも気付かなかった。
その彼は、自らの腕で顔を覆っている。
bkm
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