告白8 : 8 / 11



けれど。

「オレが間違ってんの?」

その瞬間。
不意に先輩の足が止まった。
それに気を取られて、先輩の言葉が霞む。

「…せ、」
「二人きりになりたい、って思うのは、おかしい?」

ゆっくり、彼は振り向いた。
ずいぶん久しぶりに、先輩と目を合わせた気がした。

「そばに居たいとか、触れていたいって思うのは、オレだけなの?」

先輩の口からは、俺が予想もしない言葉ばかりが溢れてくる。

「やっぱり、オレと居るより、みんなで居た方が楽しい?」
「え、…いや…」
「答えらんないんだ」
「そ、そうじゃなくて…!」



「いいよ、わかった」


何が"わかった"のか。
俺は何も分かっちゃいないのに。

「悪かったね、勝手に引っ張ってきて」

何が"悪かった"のだろうか。
俺は何も言っていないのに。
彼は俺の何を理解したのか。

「戻っていいよ、アイツらのとこ」

そして、背を向けてしまう。
しかし口調は優しい。普段よりももっと、だ。
人混みが彼の背中を徐々に、徐々に飲み込んでいく。




…ああ、今ここで、彼を逃したら。




『名前、呼んでよ』







「さ、」






bkm


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