▼ 告白8 : 8 / 11
けれど。
「オレが間違ってんの?」
その瞬間。
不意に先輩の足が止まった。
それに気を取られて、先輩の言葉が霞む。
「…せ、」
「二人きりになりたい、って思うのは、おかしい?」
ゆっくり、彼は振り向いた。
ずいぶん久しぶりに、先輩と目を合わせた気がした。
「そばに居たいとか、触れていたいって思うのは、オレだけなの?」
先輩の口からは、俺が予想もしない言葉ばかりが溢れてくる。
「やっぱり、オレと居るより、みんなで居た方が楽しい?」
「え、…いや…」
「答えらんないんだ」
「そ、そうじゃなくて…!」
「いいよ、わかった」
何が"わかった"のか。
俺は何も分かっちゃいないのに。
「悪かったね、勝手に引っ張ってきて」
何が"悪かった"のだろうか。
俺は何も言っていないのに。
彼は俺の何を理解したのか。
「戻っていいよ、アイツらのとこ」
そして、背を向けてしまう。
しかし口調は優しい。普段よりももっと、だ。
人混みが彼の背中を徐々に、徐々に飲み込んでいく。
…ああ、今ここで、彼を逃したら。
『名前、呼んでよ』
「さ、」
bkm
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