▼ 暴走 : 3 / 14
「な、せっかくだから、みんなで勉強しようぜ?な、な?」
「勉強が必要なのは嵐くんだけだからね?」
「うっ…」
めげない嵐くんに、年が1コ下でも、神野さんは容赦ない。
確かに、2年生成績順1位は神野さん、2位は恭祐くん、3年生1位に奏斗くん、と、特寮はまさに粒揃い。雅紀くんもバスケで特寮入りしたらしいけど、成績は常に10位以内と安定しているみたいだ。光希くんも多分その辺だったと思う。
「ま、オレは暇だからいいけどね。奏斗くん、慶護連れてきても良い?アイツ、また結構長いこと休んでたからさ、勉強教えてほしいんだって」
「うん、構わないよ」
…慶護…?
すると神野さんの口から聞き慣れない名前が飛び出した。
…誰だろう。
「慶護、オレの数少ない友達ね」
そんな俺の思考を読んだかの如く神野さんは言った。
数少ない、ってのは置いておいて、彼の友達、ってことはどうせ、イケメンかインテリかのどちらかだろう。類は友を呼ぶ、って言うし。
「なんだよー慶護連れて来るのかよ!」
「嵐、文句言うなら勉強会しないからね」
「…うぇーい」
その慶護さんとやらは、何やら特寮組の中でもメジャーな存在らしい。
…一体どんな人なんだろう。
「あ、翔」
すると神野さんは、思い出したように言うと、俺の耳元に顔を寄せてきた。
「慶護はただの友達だから、嫉妬しなくていいからね?」
彼の言葉はするりするりと鼓膜を通り抜けて、脳ミソに届いた。
「ん、なわけ…」
否定しようと見上げたその顔は、得意のニンマリ笑いを浮かべていて。
…まったく、彼には敵わなくて困る。
bkm
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