▼ 暴走 : 2 / 14
「やべぇよ…忘れてたよ…」
着替えを済ませて朝の食卓につくと、顔を真っ青にした嵐くんが震えていた。
「ど、どうしたの…?」
そんな姿を見せられるとさすがに焦る。
恐る恐る訊いた。
「テストだよ!体育祭という甘い罠に隠されたテストだよ!」
…そうなのです。
体育祭も終わり、6月下旬にもなると、期末テストが始まる。
体育祭で羽目を外しすぎ、そのテンションを引きずってしまうと、テストに影響が出るだろう。
しかし、うわあああ、と大袈裟に嵐くんは喚いているけど、テストまではまだ3週間もある。
…何をそんなに騒ぐのか。
すると嵐くんはガシッと俺の両肩を鷲掴みにした。
「…翔、お前、まだ3週間もあるじゃんとか思っただろ」
「…ご、ごめんなさ」
「いいか、俺はな、頭じゃなくてスイセンで、バスケで特寮に入れたんだ…つまり…分かるだろ?」
「…もしかして、嵐くんて、あんまり、勉強できな」
「ソレを言うなぁああ!!」
「ごごごめんなさいいい!」
…ひえぇぇ。
理不尽にも至近距離で叫ばれる。バスケ部長の声量はタダモノではなかった。
しかしここまで切羽詰まっているなんて、嵐くんはよほど自信がないらしい。
「…仕方ないなあ、じゃあ、勉強会でもしようか?」
そこで口を開いたのは奏斗くん。
その瞬間、嵐くんの顔色がガラリと変わった。
「ほんとか!?」
「あんまり特寮がバカだと思われても困るし」
「……光希このやろー…」
いつも言い合いになる光希くんと嵐くん。でもこの時ばかりは嵐くんも何も言えないみたいで。
bkm
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