思惑9 : 9 / 12



階段を上がって廊下を進んだ奥の部屋の扉を押し開き、先輩は部屋に入っていく。


俺も続いて、部屋に入った。



「─…!」


その瞬間。

扉を閉めて振り向いた、その瞬間。


「…っ、ん…ふぅ…」

唇を塞がれた。
すぐに俺の唇を割り開いて、先輩の舌が入り込んでくる。彼は忙しなく角度を変えながら、貪るようなキスをした。

「…オレのことほったらかしで、楽しかった?」

長く激しい口づけの後、俺の頬を優しく撫で、彼は呟く。

「…せ、んぱ」
「オレは、ずっと翔に触りたかったのに」

頬に触れたまま、伸ばした親指で俺の唇を制すと、彼は続けた。
いつもの優しい目のはずなのに、それは何だか寂しげで。

「…恭祐、何か言ってた?」

彼は大きく頭を掻いて、ベッドにボスンと腰かけた。

「…先輩は、泳げないんだ、って、」
「……余計なことを…」

ハァ、と大きなため息。そしてまた、ガシガシと金色の髪を自らの大きな手で乱した。

…怒っ、た?

そう思って、恐る恐る、覗き込もうとしたら、フイ、と顔を反らされてしまった。



「……先、輩」
「………」




bkm


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