▼ 思惑9 : 9 / 12
階段を上がって廊下を進んだ奥の部屋の扉を押し開き、先輩は部屋に入っていく。
俺も続いて、部屋に入った。
「─…!」
その瞬間。
扉を閉めて振り向いた、その瞬間。
「…っ、ん…ふぅ…」
唇を塞がれた。
すぐに俺の唇を割り開いて、先輩の舌が入り込んでくる。彼は忙しなく角度を変えながら、貪るようなキスをした。
「…オレのことほったらかしで、楽しかった?」
長く激しい口づけの後、俺の頬を優しく撫で、彼は呟く。
「…せ、んぱ」
「オレは、ずっと翔に触りたかったのに」
頬に触れたまま、伸ばした親指で俺の唇を制すと、彼は続けた。
いつもの優しい目のはずなのに、それは何だか寂しげで。
「…恭祐、何か言ってた?」
彼は大きく頭を掻いて、ベッドにボスンと腰かけた。
「…先輩は、泳げないんだ、って、」
「……余計なことを…」
ハァ、と大きなため息。そしてまた、ガシガシと金色の髪を自らの大きな手で乱した。
…怒っ、た?
そう思って、恐る恐る、覗き込もうとしたら、フイ、と顔を反らされてしまった。
「……先、輩」
「………」
bkm
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