▼ 思惑8 : 8 / 12
「毎年同じで悪いんだけど…許してね?」
「いや、十分すぎるよ。いつもありがとう、光希」
「あー、腹減ったー!早くメシ行こうぜ!」
奏斗くん、嵐くん三年生の二人は、もう慣れっこなのか、遠慮する素振りもなく靴を脱いでいた。
「やっぱりひろーいなー」
「…お邪魔します」
二年生三人も(性格の問題だろう)、サラリと入場。
神野さんに至っては、無言。あの雅紀くんでさえ、喋ったのに。
…俺、ほんと緊張。
「部屋、どーするー?でっかい和室でもいいし、それぞれ洋室でもいいし…」
いや、こんな立派なトコに独り洋室とか、心細すぎる。
ココは、みんなで和室でワイワイの方が…。
「おれは、」
「オレと翔」
そんな俺の言葉は虚しく、別の声にキッパリ遮られた。
「二人一緒で、イイよね?」
見上げた神野さんの横顔は、相変わらず怖いくらいに凛としていて。
「そう言うと思った。ハイ、これ二人部屋の鍵ね」
「ん、ありがと」
まるで周りを見ていない。
…そんな雰囲気。
俺には短く、行こ、とだけ言って、スタスタと階段を上がっていってしまった。
残されると困る、というのもあるけど、有無を言わせないようなその背中に引っ張られるように、俺も急いで着いていった。
bkm
← →
/全80page
≪back