思惑6 : 6 / 12


......


「いらっしゃいませ!」

ズラリと並んだ従業員さんが一斉に頭を下げる。いくら向こうがもてなす側だといっても、逆に申し訳ない気分になってしまった。
さて、なぜ俺たちのような、普通の高校生が、こんな立派なホテルに泊まれるのかといえば。

「みんな、ただいまー!」

ぱああ、と輝く笑顔を振り撒いて、光希くんが従業員に駆け寄っていく。女性も男性も、きゃいきゃいしながら光希くんとテンション高めに話していた。

「お帰りなさい!」
「お久しぶりです!」
「えー、5月に帰ってきたじゃん!」
「皆、光希様にお会いできることを待ち望んでおりましたから…」
「…うん、ありがとう!俺も会いたかったよ!」

そう。
ここのホテル、光希くん家で経営しているそうな。
…彼は、正真正銘のお坊っちゃんだったのです。

「毎年ありがとうね、別館、空けてもらって…」
「いえいえ、光希様のご友人の方々にいらして下さるのですから、当然のことです」

飛び交う敬語が眩しい。
俺はつくづく、とんでもない人を先輩に持ってしまったと思った。もちろん良い意味で。

「では、ご案内させて頂きますので、どうぞこちらへ…」

その内の一人の女性従業員さんが、俺たちをホテルの奥の方へ促した。それに続く光希くんにならい、俺たちは後へ続く。
他の従業員さんは、俺たちの荷物を持ってくれた。

…いやはや、本当に申し訳ない。




bkm


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