思惑5 : 5 / 12



俺も恭祐くんに腕を引かれ、砂浜を振り返れば、ポツンと、神野さん独り。

「ちょ、恭祐くん、いいの?」

「いいのいいの!アイツ、泳げねーから!」



…は?

思わず、けらけらと笑う恭祐くんの横顔を凝視した。

…いやいや。
神野 朔哉という人は、他に類を見ないほどのイケメンで、成績優秀、スポーツ万能、まるで絵に描いたような王子様。

…まさか、彼に、にんじん以外の弱点があろうとは。



「知らなかった…」
「だろ?アイツとしては、翔に知られたくなくて必死だったんだろーけど」

そういえば、ココに着いたときも、他の誰よりビーチバレーを推していた気もする。

…別に、そんなにひた隠しにする必要もないのにな。

俺としては、隠し事されていたみたいで、何だか寂しい…気も、する、かも、しれない…。

「イイじゃん、今日くらい」
「わ…っ、ちょ、」

「最近、いっつもアイツが独り占めしちゃってるからさ。たまには、俺とも遊ぼ?」

ね?と、恭祐くんは俺の肩に腕を回して、頬が触れあうくらいの距離で笑った。
早く!と、嵐くんたちが急かすと、恭祐くんはあっという間に腕をほどいて、行ってしまった。
途中で振り向いた恭祐くんが手招きする。
置いて行かれないように、俺も、熱い砂を蹴った。




bkm


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