覚悟 : 9 / 12


その瞬間。

ガタガタバタン、忙しない物音と一緒に、まるで爽やかな声が響いた。

俺の反射神経がフル稼働されたのか何なのか、ヤバい、と思うよりも速く、一瞬で神野さんから身体を離すことができた。そして、玄関に視線を飛ばす。

「あら…俺、お邪魔だったかな…?」

そこには、ギターケースを背負った恭祐くん。彼は踵とスニーカーの間に指を突っ込んで、今まさに靴を脱がんとした体勢で、固まっている。

…一瞬で血の気が引いた。

「うん、かなり邪魔。」
「それはすまない」
「とか言いながら平然と座るのやめない?」
「まあまあ、気にせず」
「…や、オレは気にしないんだけど、」

…翔が、ね。

少しのため息を滲ませて、神野さんは言う。

…イカガワシイコトを始めよう、って時に、人の目を気にするのは、普通のコト、

…だよね?


......


何だかソワソワ落ち着かず、ベッドに腰かけ、膝の上で両の手をゴシゴシと擦り合わせる。
そろそろ消灯時間。俺と神野さんは部屋に戻り、ぽつりぽつり話をしながら、彼はケータイをいじっている。

恭祐くんが帰ってきたあのあと、晩メシ食べてない、って恭祐くんにちゃっとご飯を作ってあげて、ちゃっかり恭祐くんもケーキを食べ始めて。結局、あのケーキは3人で食べたのだった。
ちょうどケーキを食べきった頃、光希くんが帰ってきて、また暫くして運動部組が帰ってきて、みんなでテレビ見たり、順番に風呂入ったりしてるうちに、こんな時間になってしまった。

…もちろん、何も致せていない。



bkm


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