覚悟 : 7 / 12


優しい手なのに、優しい笑顔なのに、その表情は、なんだか寂しくて。

…堪らなかった。

彼の胸元を引き寄せて、目一杯に首を伸ばして、彼の唇に、ただぎゅうっと、押しあてるだけのキスをした。

「…かける、」
「こ、れからは!」

どうしてか分からないけど、声が震えた。彼は目を見開いて、驚いたように俺をじっと見てる。

「今までの分も、おれが…」

…誕生日、ってのは、その日ばかりは自分が主役で、美味しいモノを食べて、ケーキを食べて、プレゼントを貰って。
楽しくて、幸せな日のはずなんだ。

「おれが、祝ってあげる!」

…それを、俺が教えてあげたいと、思ったんだ。

力説するうち、なんだか目頭まで熱くなってきて。
するとまた、ポンと俺の頭に、大きな手が置かれた。

「…ありがと」

優しい声が降ってくる。顔を上げれば、綻んだ彼の顔があった。
…そんなに、嬉しそうな顔、されたら。

「こ、今年は、何もプレゼント用意できなかったけど…」

心臓が、はやくなる。
顔も、あつい。

「こ!…こころの、準備は…してきた、から…」

もう、彼しか目に入らない。
どきどきどきどき、自分の声より大きいんじゃないか、ってくらいの心臓の鼓動。
頬だって、焼けてるんじゃないか、ってくらいに熱い。
どうしたらいいか分からなくて、すがるように彼の目を見てた。

「っ、とに…」

すると彼は、溜め息混じりに、わしゃわしゃ、って頭を掻いた。
今にもぽたりと落ちそうな滴をどうにか堪えて、彼を見つめてた。
…そして。

「お前と居ると、ほんと、我慢きかねぇ…」

ふわっ、といいにおい。
すぐそばに、彼の頬。
背中には、彼の腕。



bkm


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