覚悟 : 5 / 12


「ケーキ、作れない?」


…何を言うかと思ったら。
予想だにしなかった問いに呆気にとられた。

「え…や、作ったことはないけど…。立派なオーブンあるし、作って作れないこともない、かな?…時間はかかるけど…」
「ん、おっけーおっけー。いちごが乗って、生クリームのやつね。」

いちごだよ、いちご。と、やけに彼は苺を強調する。
オムライスと苺が好きな、イケメン高校生。

…ギャップが、凄まじい。
思わず溢れそうになる笑みを抑え、うん、と頷く。
すると、彼は満足そうな顔で立ち上がった。

「そうと決まれば買い物。材料、足りないよね?」
「あ、うん。主に、ケーキのが…」
「んじゃ、着替えてくる。ちょっと待ってて。一緒に行こ」

祝われる側は彼なのに、買い物、買い物、と、なんだか楽しそうに部屋へ消えていった。
また、あのガラガラを押したがる彼の姿を思い浮かべ噴き出したことを、きっと、彼は知らない。


......


そのあとは、二人で買い物(神野さんは例の如くガラガラを押して)、帰ってきてケーキを焼いて、焼けるまでの間にオセロとか、してみたり。
結局、俺が負けるんだけど。
そして、外が薄暗くなってきたころ、二人分のオムライスを作って、二人並んで食べた。
出来栄えを凄く誉めてくれて何だか照れ臭かった。

─そして。


「…売り物?」
「いや、それは誉めすぎ」

小さめの丸いスポンジに塗られた真っ白いクリーム、その上にちょこんと座る、数個の苺。中央には、彼がトイレに行った隙に乗せた、おめでとう、のチョコのプレート。
彼は俺が作ったケーキを、横から覗き込んだり、上からまじまじと眺めたりしてた。



bkm


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