覚悟 : 4 / 12


「…うーん、どうしよう」
「なにが?」

うああああああああっ!



…びっくりしすぎて声も出なかった。

恐る恐る顔を上げるとそこには、今日の俺の情緒不安定の元凶とも言える彼がいた。

「あれ、今日はビビらないんだね?」


…全ッ然、気付かなかった。

薄っぺらな鞄をソファーの傍に放り投げ、緩いネクタイをさらに緩くしながら、クスクスと、神野さんは上品に笑う。

「─それで?」

何とも反応できずにいると彼は、スルリと流れるように俺の隣に座る。そして、かなりの至近距離で、囁くように、言った。

「祝ってくれるんだっけ?」

そして、いつもの余裕たっぷりな笑みを浮かべる。

…なんだか、俺ばっかりが緊張しているみたいで、ちょっと悔しい。

依然として、心臓の鼓動は速いまま。

「…今日の夕飯、おれの料理でも、いい?」
「もちろん。翔のが、良い。」

恐る恐る訊いた。
眩しいニッコリ笑顔が返ってきて、安心。

…翔のが、ってトコが。
かなり、嬉しい。

「何がいい?」
「オムライス」
「…にんじん抜き?」
「分かってるじゃん」
「あとは…ケーキ、買ってこようかな。食べる、よね?」

「……ね、翔」

すると、彼は急に真顔になって、俺を見た。



bkm


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