▼ 覚悟 : 4 / 12
「…うーん、どうしよう」
「なにが?」
うああああああああっ!
…びっくりしすぎて声も出なかった。
恐る恐る顔を上げるとそこには、今日の俺の情緒不安定の元凶とも言える彼がいた。
「あれ、今日はビビらないんだね?」
…全ッ然、気付かなかった。
薄っぺらな鞄をソファーの傍に放り投げ、緩いネクタイをさらに緩くしながら、クスクスと、神野さんは上品に笑う。
「─それで?」
何とも反応できずにいると彼は、スルリと流れるように俺の隣に座る。そして、かなりの至近距離で、囁くように、言った。
「祝ってくれるんだっけ?」
そして、いつもの余裕たっぷりな笑みを浮かべる。
…なんだか、俺ばっかりが緊張しているみたいで、ちょっと悔しい。
依然として、心臓の鼓動は速いまま。
「…今日の夕飯、おれの料理でも、いい?」
「もちろん。翔のが、良い。」
恐る恐る訊いた。
眩しいニッコリ笑顔が返ってきて、安心。
…翔のが、ってトコが。
かなり、嬉しい。
「何がいい?」
「オムライス」
「…にんじん抜き?」
「分かってるじゃん」
「あとは…ケーキ、買ってこようかな。食べる、よね?」
「……ね、翔」
すると、彼は急に真顔になって、俺を見た。
bkm
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