覚悟 : 3 / 12


「ま、別に誕生日祝ってもらって喜ぶ年でもないけどね」
「ううん、それ口実に騒ぎたいだけだよね」
「まあね」
「なんだよオイ」

あはは、と笑うみんなの脇で、上手く笑えない、俺。

みんなが部活で居ない、ということは、きっと明日は、5時6時まで俺と神野さんの二人きり、だ。



…これって、チャンス、なんじゃないの?


「お、おれが!」

そう思ったら、不思議と声は出てきてくれた。
みんなが、何事?って顔でこっちを見てる。

「おれが、祝って、あげる…」

そのせいで、たちまち恥ずかしくなって、言葉はつい尻すぼみになった。

「おっ!やるなぁ!」
「可愛いね、翔」
「別にいいんだぞ、翔!こんなのの誕生日なんか!」
「…嵐、それはナイよ」



「…翔」

やんややんやと賑わう中、彼だけは、優しい声で俺を呼んだ。必要以上に赤くなっていないか心配しつつ、顔を上げる。

「…ありがと」

そう言って、彼は微笑んだ。

…その笑顔は、反則。
そう、痛感した瞬間だった。



......



今日にかぎって、1日が過ぎるのがとんでもなく早い気がする。
6時間もあるはずの授業はあっという間に終わり、放課後。誰も居ない寮のリビングのソファーで、独り膝を抱えていた。緊張なのか不安なのか、俺の心臓は忙しなく波打っている。
神野さんは、まだ来ない。

…どうしようどうしよう。
昨日、勢いで「おれが祝ってあげる」だなんて言ってしまったけど、正直、どうしていいか分からない。
彰太曰く「美味いモン食わせて上目遣いでバーン!」らしい。

…参考にする気はさらさらないけど。
でも、美味しいモノを食べさせるのはいいかもしれない。とりあえずにんじんを避けて誕生日なんだから、普段よりも豪華めにして、それからそれから…。



bkm


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