暴走 : 14 / 14


「……翔…好き…」

微かに空いた隙間で、彼は呟く。
そのまま墜ちるように彼は俺の首筋へ、俺はまた身体を震わせた。
すると、ゴソゴソ、彼の手が俺の身体をまさぐり始める。

「…っ!…ちょ、なに…」

いつの間にベルトを緩めたのか、ズボンの中に彼の手を感じた。腰回りを撫で回される。
その時、ふと、彰太の言葉が頭を過った。

『カクゴしとかなきゃね?』




「ちょ、っと待って!」

思わず、彼の身体をはね除けた。
すると案の定、神野さんはビックリ顔。
それがわかって、急に顔があつくなった。

「や、まだ…その、ココロの準備、が…っ!」

…とんでもないことをしたと思う。

けれど、やっぱり心の準備って大事だと思う。だって、しかも、ココ、学校だし。
頭の中はグルグルで、浮かぶのは言い訳ばかり。もう期待はしていないけど、やっぱり口から外へは出てきてくれなくて。

…その時。



「…ぶはっ」

え、と思って顔を上げると、神野さんは俯いて、肩を震わせていた。
くっくっと喉を鳴らして、笑ってた。

「そんなに、ビビんなよ…」

え、え、って、パニックになりかけてた俺の頭をグシャって撫でつけて、彼はガラッと勢いよく、戸を開けた。

「今日は、シねーから」

先に寮戻ってるから、早く来いよ。
そう言って、彼は俺を置いて出ていった。
彼の姿が見えなくなった途端力が抜けて、へたん、とその場に崩れ落ちた。

かあああ、なんて、ポストとかトマトみたいに赤くなってるんじゃないかと心配するくらいあつい頬を、両手で包み込む。



…ヤバい、どうしよう。

俺は、俺が思っている以上に、あの人のことを、


すき、


…なのかも、しれない…









07...神野くんの暴走。



bkm


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