暴走 : 12 / 14


彼がまたその煩わしい口を開いたとき、鋭い声がそれを遮った。

「あれ、朔哉。どうしたの?」

にもかかわらず、ケロッとして彼は言う。
その姿に、神野さんは一瞬だけ眉をひそめた。

「…何してんの、お前」
「何って、世間話?」
「…もういいから、お前、寮行ってろ。恭祐と光希くん居るから」
「はーい。…じゃあね、翔くんと彰太くん」

態度を改めることもなく、ヒラヒラと手を振って、その人は去っていった。
神野さんはその背中を目で追い、ため息をひとつ。

「…彰太、」
「は、はいっ」
「翔、借りてくね」
「…はい!どうぞどうぞ!」

神野さんが俺に目配せするよりも早く、彰太は俺を立たせ、まるで神野さんに押し付けるみたいに、グイグイ背中を押してきた。
特にそれには抗わず、教室を出る。

「…翔」

やけに硬い声で、神野さんは言った。
行こ、と小さく促され、教室を後にする。

…どこに連れて行かれるんだろうか。



「…ごめんな」

流石にテスト前、普段の騒がしさからは想像もつかないような静けさの廊下。
反響する、彼の声。

「あいつ、余計なこと言っただろ。気にしなくていいからな」

優しいふたつの目が、俺を見てた。



bkm


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