▼ 暴走 : 12 / 14
彼がまたその煩わしい口を開いたとき、鋭い声がそれを遮った。
「あれ、朔哉。どうしたの?」
にもかかわらず、ケロッとして彼は言う。
その姿に、神野さんは一瞬だけ眉をひそめた。
「…何してんの、お前」
「何って、世間話?」
「…もういいから、お前、寮行ってろ。恭祐と光希くん居るから」
「はーい。…じゃあね、翔くんと彰太くん」
態度を改めることもなく、ヒラヒラと手を振って、その人は去っていった。
神野さんはその背中を目で追い、ため息をひとつ。
「…彰太、」
「は、はいっ」
「翔、借りてくね」
「…はい!どうぞどうぞ!」
神野さんが俺に目配せするよりも早く、彰太は俺を立たせ、まるで神野さんに押し付けるみたいに、グイグイ背中を押してきた。
特にそれには抗わず、教室を出る。
「…翔」
やけに硬い声で、神野さんは言った。
行こ、と小さく促され、教室を後にする。
…どこに連れて行かれるんだろうか。
「…ごめんな」
流石にテスト前、普段の騒がしさからは想像もつかないような静けさの廊下。
反響する、彼の声。
「あいつ、余計なこと言っただろ。気にしなくていいからな」
優しいふたつの目が、俺を見てた。
bkm
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