▼ 暴走 : 11 / 14
「翔くんの知らない朔哉だって、知ってるよ、俺」
ニッコリ。
嫌味なくらいの笑顔。
今度は、はっきりと俺に向けられた。
「…そういえば」
思い出したように彼は言う。
…どうしていちいち、芝居臭い動きをするんだろうか。
それが何だか鼻についた。
「そろそろ、朔哉の誕生日だね。翔くんは、何か準備してるの?」
「…は?」
…誕生日?
「知らなかったの?」
へぇ、と彼は目を細める。
…まるで、獲物をいたぶるかのように。
その後もペラペラと何だか話していたけど、何も耳に入ってこなかった。
俺はバカみたいに、彼を見詰めるしかできなくて。
「翔くん、本当に」
語気を強めたその声が、侵入を拒絶する鼓膜をこじ開け、震わせた。
「朔哉の恋人なの?」
「………っ」
だってまだ、付き合ったばっかりだからしょうがないじゃん。俺、あの人のこと何も知らないけど、あの人だってきっと、俺のこと何も知らないよ。
…そんな言い訳は、喉の奥に引っ込んで出てきてくれなくて。
喉がぎゅうっと締まって、苦しい。
「だいたい、朔哉が─」
…誰か、
「オレが何だって?」
bkm
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