暴走 : 11 / 14


「翔くんの知らない朔哉だって、知ってるよ、俺」

ニッコリ。
嫌味なくらいの笑顔。
今度は、はっきりと俺に向けられた。

「…そういえば」

思い出したように彼は言う。

…どうしていちいち、芝居臭い動きをするんだろうか。

それが何だか鼻についた。

「そろそろ、朔哉の誕生日だね。翔くんは、何か準備してるの?」





「…は?」


…誕生日?



「知らなかったの?」

へぇ、と彼は目を細める。

…まるで、獲物をいたぶるかのように。

その後もペラペラと何だか話していたけど、何も耳に入ってこなかった。
俺はバカみたいに、彼を見詰めるしかできなくて。



「翔くん、本当に」

語気を強めたその声が、侵入を拒絶する鼓膜をこじ開け、震わせた。

「朔哉の恋人なの?」

「………っ」


だってまだ、付き合ったばっかりだからしょうがないじゃん。俺、あの人のこと何も知らないけど、あの人だってきっと、俺のこと何も知らないよ。

…そんな言い訳は、喉の奥に引っ込んで出てきてくれなくて。

喉がぎゅうっと締まって、苦しい。



「だいたい、朔哉が─」





…誰か、




「オレが何だって?」



bkm


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