幼馴染と言う関係は正直、面倒臭い。
なぜかと言うと…。

T、親が取り敢えず、何でも一緒にさせたがる。
U、思春期になると、周りからちやほやされる。
V、一度、異性として好きになってしまえば、後が辛くなる。


そう、「近すぎて近付けない」のだ。




「はあ…。」
「溜息ついてると、幸せが逃げて行くぞ。ほら、このポ○キーみたいに。」
と言って、私が食べようとして開いた袋から一本攫っていく。
「いや、それは単に、犬飼が食べたいだけでしょ。私のポッ○ー返せ。」
○ッキーを犬飼の手から取り戻そうとする私を見、面白がって、わざと私の手の届かぬ位置まで、ポ○キーを上げる。
「返してほしかったら、力づくで奪うんだな。ま、食べるけど。」と言って、口に咥え、ぼりぼりと食べ進めていく。私の怒りが声にならない悲鳴になった瞬間、
「犬飼君。#name2#さんに何をしているんですか。」突然現れた青空君に委縮する犬飼。
「これはだな…。」
「言い訳は後で聞きますよ。まずはこれから始めますか。」と言いつつ、懐から取り出すミニ黒板。それを見た途端、Bダッシュで逃げだす犬飼。青空君の前から神風の如く逃亡。

ほんと、こういうときだけ足が速いんだから。



「で、どうしたのですか?また犬飼君のことで悩んでいるのでしたら、無用なことだと思いますよ。」
犬飼が座っていた、私の前の席に腰かける。
私のため息の理由を知っている青空君はこうやっていつも相談に乗ってくれる。
「どうしてそう言えるの?犬飼はどうせ、私のことなんかただの幼馴染としか思ってないよ。告白したところで、振られて、その後気まずくなるだけ。今の関係が一番いいんだって。」力なく笑う私に、同調するように悲しそうに笑う青空君。


いつも何かとちょっかいをかけてくる犬飼。犬飼はきっと私の気持ちなんか知らない。


『幼馴染を一度好きになってしまえば、辛くなるのは自分。』
そんなの分かってた。
どうして好きになったのだろう?どうして、こんなに苦しまなければいけないのだろう?

どうして、私たちは幼馴染なのだろう?



「本当に貴方達はよく似ていますね。」
ふと、青空君がそう呟く。
「どういうこと?」
と尋ねる私には「犬飼と私がよく似ている理由」が全く理解できない。
「ほら、帰ってきましたよ。帰ってきたというより、ずっと扉の陰から見ていたという方が正しいかもしれませんね。」
と、目を扉の方に向ける。
「えっ。」
私もそれと同時に振り向き、ぱっと犬飼と目が合い、扉の陰から現れた犬飼がこちらに近づいてくる。

「ずっと、様子見てた。名前は、とりあえずこっち来い。」
と、私の制止の声も聞かず、犬飼は私の手首をつかみ、ほぼ私を引き摺る形で教室を出た。
状況が飲み込めず青空君に助けを求めるも、青空君の表情は意味深な笑顔のまま。

「頑張ってくださいね。」その呟きは空気に解けて消えた。



ようやく屋上に着いたところで、強く握られていた手首を解放される。
「何するのよ?」私は赤く腫れる手首を見ながら言う。
「青空と仲いいんだな。」私が痛がる様子をも無視して、強く言い放つ。
「別に関係ないじゃん。」私もそれに呼応するように、苛つき始める。
「だったら、名前。あんなに楽しそうに、何話してたんだ?」
と言う、冷たい声。
今までにないほど無表情な犬飼。

「関係ないじゃん…。」

周りに張りつめた空気が一層鋭いものに変化して行く。
犬飼は表情を変えない。

その様子に委縮するも、この重い空気に耐えられなくなった私は言葉にしてしまったのだ。

 
「これ以上私に構わないでよ。苦しめないでよ。私の気もいらないで。」

緊張の糸が切れ、泣き始めてしまった私を見て、はっと正気に戻った犬飼は、ごめんと一言呟く。

それを火種に、
「散々振り回しておいて、ごめんの一言だけなんて、酷いよ。私はごめんなんて言ってほしくない。」

私は気持ちが抑えられなくなり、嗚咽を漏らしながらも言葉を紡いだ。

「犬飼はどうせ、私のことどうでもいいんでしょう?じゃあもうほっといてよ。そっちの方が楽だから。」

私の声が誰もいない屋上に響き渡る。勢いで吐き出した言葉だった。

ああ、色々言ってしまった。
これでもう終わりかもしれないな。

しかし、私の泣きわめく様子に少々、呆れながら困ったように笑う声が聞こえる。
なんで笑ってるの?

「どうやったら、放って置けたんだろうな。でもな。それは無理な話だ。」

その言葉を聞き、犬飼の表情を確認するため、私は俯いていた顔を上げようとすると、犬飼は思いっきり髪をぐしゃぐしゃにするように頭を撫でられる。髪がぐしゃぐしゃになっちゃうじゃん…。

あっそう言えば、と思い出す。あれ、いつ以来だろうか?こうやって頭を撫でてもらったのは。

「今、俺の方、見るなよ。」

「なっ、なんで?」
戸惑う私は俯いたまま、覗き見るように犬飼の表情を伺う。
ああ、そうなんだと、納得し私は一言言った。


「私たちって、本当に似た者同士の馬鹿だね。」

青空君の言葉を思い出し、そう言葉にした私。

結局はお互い意地張り合っていただけなんだ。
青空君、ありがとうね。これでようやく、伝えられるよ。



そうして、俯いていた顔を上げ、照れた様子の犬飼に向き直る。



「ね、隆文。大好きだよ。」


(「近すぎて近付けない」なんて自分に嘘をついていていたんだね。)



■あとがき(あればどうぞ)
なんかすみません。

初めて企画に参加した&文章書き始めたのが最近ということで、うまく二人の関係性や気持ちを表現できていなかったところが多々あると思います。

とりあえず、まとめると、

二人は幼馴染⇒中二の時ぐらいに色々と周りから付き合っているんじゃないかと騒がれ、今まで通りあまりべたべたしていると周りがうるさい、後、自分たちも意地を張って、お互いに距離を置くようになる。(ここら辺は全く描けていない裏設定みたいなものです。)⇒段々、お互いのことを好きだと自覚していく⇒高校に入り、一緒のクラスになったのはいいが、お互いに距離を測りかねている。⇒そしてこの状況。

ハッピーエンドにするか、しないかで迷ったのですが、「初恋は成就しない」というジンクスを打破したいがため、ハッピーエンドに。

そして、勢いで書いていくうちに長文に…。

拙い文章ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。


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