今日から3週間、目覚めちゃダメだよ。
にっこり笑って俺の頬に口づけながら囁いた、彼。「って言ったらどうする?」後付けされた言葉にもどう答えればいいのかわからず思わず黙る。その様子にくすりと笑って、また頬に口づけを落とされた。今度は左頬だ。


「それは、どういう意味だよ」

やっと出た言葉は率直なもので、無理矢理だした声は掠れていた。

「もし、の話だよ」
「もし?」
「今が大戦争中だったら、俺はそう言ってシズちゃんを眠らせて守るかな」
「なんだよ、それ」
「んーん、俺にもわからない」


臨也が言う3週間がたったら、きっとその戦争は終わる。俺は安全かもしれない。でも、俺を眠らせた手前は、眠ってないんだろ。じゃあもう結果はわかりきってるじゃないか。じっ、と赤目を見つめる。どうしたの?という顔をされた。


「…そしたらきっと、俺は大混乱だ」
「?」
「だって目が覚めたら、手前はもういないんだろ」
「…さあ?もしかしたら無事かもよ?」
「違う。きっと手前がそれを言うときは、自分を犠牲にするときだ」
「…」
「俺はそんなの、嫌だ」
「…シズちゃん」

ぎゅ、と抱きしめてきた腕の力は強かった。きっとこいつにも、いろいろと悩むことや考えなければいけないことがあったんだろう。抱きしめられた腕から必死なそれが伝わってくるみたいだった。よくわからないけど、俺はその腕を支えてやるし、離すこともしないし、俺の腕を背中にまわして俺たちに隙間があかないようにもする。それでこいつが安心するなら、俺はそれでいい。ぎゅ、と抱きしめ返す腕の力を強くしたら、臨也の肩がぴくりと動くのがわかった。顔を上げた赤目は、泣きそうな顔なんてしてなかったけれど、俺の顔を見て歪めた口角がやけに寂しげだった。「シズちゃん、好きだよ」今度は唇に口づけを落としながら囁いた。「シズちゃんは?」聞きながら口づけを落とすものだから答えられない。きっとこいつだってわかりきってる。だから答えを聞く前にキスをするんだろ?俺の答えなんて愚問。これが臨也との最後の夜にならないように、俺は一緒にいるだけだ。







愛してるなんて言うなよ
(そんな言葉なんていらないって、)(手前が一番知ってるだろ)





(0829)





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