フランシスの髪型が好きだ。ふわふわの癖っ毛に首筋まで伸びた髪。風になびくたびにどきどきしてしまう。自分は男だということも忘れて。ある日出会ったフランシスは、いつものようにその髪を風になびかせていた。触ってやりたくなったけど、俺がそんなことをしても気持ち悪がられるか変にめずらしがられて後々ネタにされるかどっちかだ。だからそのフランシスの後ろ姿を凝視するだけに終わろうとした。その中で、見つけてしまった。ふわふわの癖っ毛の中にあるフランシスの寝癖を。こいつは癖っ毛のくせしてまとまっている髪質だから、こんな後ろに寝癖があるのなんて気づかなかったんだろうな。寝癖。こいつもまぬけだなあ。でもそれをかわいく思えてしまった俺はそうとう頭がおかしくなってきている。危ない危ない。この感情がなんなのかはわからないけど、近くで凝視しているうちに俺の手はいつのまにかフランシスの寝癖に触れようとしていた。言い訳とかじゃなくて、本当に無意識。そのほうが危なかったりするけど。すると触れようとした直後、それに気付いたみたいにフランシスがこっちをむいた。びっくりして俺はそのまま止まってしまった。


「あ?なんだよアーサー」
「え、や、」
「また何か俺に嫌がらせでもしようとしたのかー?」
「ち、ちげえよばか!お前の髪、髪に…」
「髪?なんだよ」
「…寝癖があったからだよ」


寝癖?きょとん、として俺の言葉を繰り返すフランシス。手で髪を触って、後ろを指でとかして気づいたようだ。あ、ってフランシスが声をだした。ああもう、言うんじゃなかった。フランシスはにやにやしながら俺に言った。「よく見てんな、アーサー」って。それが腹立たしくなったから俺はばかと叫んで、その場から去ろうとした。すると、髪に違和感。


「…おい、何ひっぱってんだよ」

「お前はいつも同じ髪型だな」

「はあ?」

「さらさらでうらやましくなるよ」

「え、な」


そう言ったフランシスの手が俺の髪をとかして、遊ぶ。意味がわからなかった。けど、その場から動けずにフランシスになすがままにされてしまった。後ろでばかにしたようにフランシスが言う。「かわいいなあお前は」って。くちびるが、髪に触れる感覚がした。


「…!」

「アーサー」

「な、んだよ」

「お前の髪、好きだぜ」

「…なっ」


顔が熱くなった。言われた言葉が恥ずかしくて恥ずかしくて、俺はそのまま後ろにいるフランシスを突き飛ばして逃げてしまった。ばか、っていつもみたいに叫んで。後ろにいるフランシスの顔は見えなかったけれど、きっとあいつはまた意地悪そうににやにやと笑っているんだろうな。それがまた恥ずかしくなった。走ってずいぶんとたったころ、フランシスの言葉を思い出した。やっぱりあいつはいけすかない奴だ。好きって、俺の髪だけかよ。また騙された気がした。









さいしょはパー
(勝ち目はあるのかな)





(0425)






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