自分のもってきたワインを飲んで酔っぱらったこの紳士は、舌のまわらないくちで小さく毒を吐きはじめた。


「ばかあ」
「だから酒はやめとけって言ったのに」
「うるせー」
「なにがうるさいだよまったく…。ほら酒、取り上げだ」
「あっ、やめろばかあ」
「だめだばか」
「……だいたいお前はなあ、」


ほらまたぐちぐち言い始める。こいつの酒癖は悪すぎて俺でも止められない。「みんなバカなんだ」とか、「俺にひどすぎる」とか、そんな言葉をつらつらならべるイギリス。聞いていくうちにこいつが可哀想になってきた。


「まあ大丈夫だって、元気だせよ」
「…あいつが、悪いんだ」
「え?」
「アメリカが、俺にあんなこと言うから」


それは拗ねたような口調だったけど、こいつの目には確かに涙がうかんでいた。ああそう、アメリカとケンカしたわけね。だから俺のとこに来たんだ。いいワインもってくるから何かと思った。「謝ればいいじゃん」と言うと「わかってる」とつぶやいたこいつは本当に見る目がない。アメリカなんかやめて俺にしたらいいのに。でもこいつのお守りは心底大変で、それをこなせるのはアメリカしかいないと知ってる俺は、本当に嫌な役目だよ。まったく。










あいつはエネミー
(それでも想ってしまうのはきっと、)(こいつがどうしようもないバカだからだ)





(0406)






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