ふああ。隣で蕎麦を食べていたユウが不意に欠伸をした。めずらしいね。どうしたの?なんて聞いても彼はなんでもないと言うばかり。昨日は任務から帰ってきたばかりでとても疲れてたみたいだったのに。自分の体を考えずにすぐ無理をする彼のことだ、今朝も早起きをして鍛練にはげんでいたんだろう。そんな彼に心配をするなというほうが無理な話だ。今日ぐらい休んでほしい。ガタリと席を立ちどこかへ行こうとするユウをとっさに腕を掴んで引き止める。少し驚いた後すぐに険しい顔に戻った彼に焦りながらもとりあえず言葉を探すがどうにも出てこなくて、しょうがなくお得意の笑顔を向けてごまかした。腕を離したと同時に舌打ちの音が聞こえる。そしてそのままどこかへ行ってしまった。だってどう言えばいいのかわかんねえんだもん。どう言えばいいの?舌打ちとかやめてよ。悲しくなる。


「無理すんなよって言えばいいじゃないかしら」
「、え」
「神田のことが心配なんでしょ?」
「き、聞いてたんさ?」
「そりゃあ、前席ですもの」


俺の様子に気付いたのであろう向かい合わせの席に座っていたリナリーが声をかけてきた。さすがリナリー。女の勘?


「でも、どっちにしろうっとうしがられそうさ」
「そうかしら?」
「え?」
「神田はきっと面倒くさいなんて思ってないわ」
「なんで」
「女の勘よ」


とりあえず神田を追ってみたらと言うリナリーの言葉を信じてユウを追うことにした。リナリーの女の勘ほど当たらないものはないのだ。


「僕にはわかりませんね」
「おはようアレンくん」
「どうして神田がラビを面倒くさいと思わないんですか?」
「どういう意味かしら」
「神田の性格なら、疲れてるときにラビのテンションはさすがにキツイと思うんですが」
「あら、アレンくんはまだ神田をわかってないわね」
「え?」


だって、ラビが神田を愛しているのと同じように、神田もラビを愛しているのよ。愛している人に心配をかけたくないと思うのは普通でしょう?ならラビに心配をかけまいと無理に強がってラビが面倒くさいふりをして、ラビに疲れていることを気付かれないようにしているのはすぐに分かるわ。それが神田の性格ですもの。幼なじみの私が言うんだから、間違いないわ。



コンコン

「ユーウ、入るさー」


ガチャリ、部屋に入るとユウはベットの上に座っていた。やっぱり少し疲れているのだろうか。顔色がいつもより悪い。心配してる俺に降ってきたのはなんか用でもあんのかなんてやけに冷たいセリフ。少しショックを受けた。ああ、本当に俺は面倒くさがられてないのかな?リナリーの女の勘がはずれたことはないけれど、やっぱり不安だ。
「用がないなら早く帰れ」
「ちゃんと用はあるさ。そんなこと言わないで」
「…なんだよ」
「なにが?」
「なんで、隣に座んだよ」
「あはは」
「お前、」隣に座ればとても嫌そうな顔をしながら俺を避けるようにする。なんで。そう思ったのが顔に出たようで、まだ何か言おうとしたユウの口が俺の顔を見た瞬間に閉じられた。俺はとっさにそれをごまかすように笑う。それを見てユウが何か悲しそうな顔をしたのを俺は見逃さなかった。
「ユウ」
「なんだよ」
「えっと、大丈夫?」
「なにが」
「顔色が悪いさ」「…それがなんだよ」
「疲れてんのに、あんま無理しちゃだめさ」
「は?」
「寝てなって」
「え、ちょ」
「いいからいいから」
誤魔化すように口を開き思いついたように会話をする。そしてその勢いに任せて無理やりユウをベッドに寝かせた。こうでもしなければ間が持たない気がしたから。しかしユウをベッドに寝かせたところで特にどうにもならないことに気付く。心配をしてくれてることだって、心を開いているからなんだけど。だめだよユウ。早く俺の思いに気付いてよ。なんて思いすら君には届かないみたい。今日も君の親友を上手に演じて笑ってあげるよ。あはは。



「俺も疲れてるみたい」









死にかけディレット
(めずらしくリナリーの勘が外れたね)
(馬鹿なのは俺かな)





(0626)





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