早食いが得意とかっていうくせに、昼飯だけこんなにも遅いのはなんでやろうと、俺は思う。屋上の青空の下で今日も俺は部活のメンバーとランチ中や。


「部長、なんで皆でお昼なんですか?」
「ミーティングも兼ねてるからやで」
「部活んときにやったらええやないっすか」
「部活はみっちり練習入れてるからそんな余裕ないねん、って昨日も言うたで俺?」
「あ、それはすいませーん」


まあそんなこんなでお昼。俺にだって一緒に食うやつらくらいはいるけど、この頃はずっとこんなんで屋上に集まってる。テニス部メンバーでお昼とかって実はめずらしい。みんなそれぞれ友達おるしその人らで食うてるからな。やから意外やってん。謙也さんのご飯食べるスピードがこんなにゆっくりなことが。早食い得意って自分で言うたはるやろこの人。せやしパッて食べてさっさとミーティングに専念するんかと思ったらむしろミーティング聞きながら食べて、部長と話しながら食べて、の繰り返し。めっちゃ遅い。なんやそれ。さっきから箸進んどらんやん。なんやそれ。いやまじで。ここ一週間こうやって昼飯食べてるけど、毎回この人は最後や。銀さんだって食べ終わってるししゃべりっぱなしの部長だって食べ終わってる。のにこの人は一人でのろのろ食うとる。俺もうすぐ食い終わるで?普段ゆっくりな俺がもう食い終わるで?自分で浪速のスピードスター言うてる人がそれでええの?え、まじでええの?


「…謙也さん」
「あい?」
「ちょっと質問なんすけど」
「なんや?」
「あんたなんでそんなに食べるん遅いん?」
「え?あ、それはなー、白石とかとおしゃべりしとるから?」
「なんで早食いせえへんの?」
「なんでやお前!友達としゃべりながらご飯を進めて行くんが一番楽しくて効率的やん!それを俺は極めとるんや!」


ああ、なるほど。って俺が納得したのはそういう考え方もあるんやなあ、ちゅう話のほうで。この人は正直別やろ。だってもう生活にスピードを取り入れとるもん。はあ、と俺はため息をついた。


「でもそれって、スローライフっすよね」



そう言ったときの謙也さんの顔は正直ごめん、って言いたくなるほど衝撃的なものやった。あれを思い出すと可哀想な気持ちになる。や、まじでごめんなさい。












水槽の魚は自ら浮かんだ
(その日から謙也さんの食べるスピードがちょっとだけ上がった)(そのぶんテンションが落ちたけど)





(0510)






「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -