相変わらず彼は軽いし馬鹿だし気まぐれだし、良いとこなんかまったくないと思う。あるとしたら、女の子によく受けるその甘い顔くらいだ。


(それでも好きなのだから、私は仕様のない人間だ)


「こんなとこにおったんか柳生さん」
「…またあなたですか仁王くん」
「宿題うつさせてくんしゃい」
「毎日毎日聞きあきました。たまには別の人を探したらどうです」
「いいじゃないの、俺と柳生さんの仲じゃけえ」


私とあなたに、どんな仲があると言うのだ。同じ学校で同じ学年で同じ部活で、ダブルスを組んでいるという、それ以外は何もない。それはこの少しのやり取りだって私には貴重なものなのに、あなたはそんなことも知らずにいつも気まぐれでやってくる。


「ありがとさん、柳生」
「べつに構いませんよ」
「また昼休みに返しにくるなり」
「いえ、部活のときで結構です。どうせ持ち帰るので」
「えらいのう」
「あなたもそうしたらどうですか仁王くん」
「そんなん、荷物が重くなるだけじゃき」
「はあ、そうですか」
「それに、こうやって柳生さんと会う口実だって作れるじゃろ」
「、は」


今なんて、そう思うとにやりと綺麗に笑った口元で、私の頬にキスを、した。わからずにいる私のまぬけな顔を見て馬鹿にしたように「プリッ」といつもの口癖を発する、仁王くん。


「あ、あなたわざと…」
「当たり前じゃき、やないとこんな毎日来るわけなか」
「な、…」
「今まで気づかんなんてとんだ鈍感じゃね、柳生さんは」
「そんな、まさか」
「まだわからんのか?」
「な、なにがです」
「俺、さっきから柳生さんのこと好き言うとるんやけど」


そんなこと、あなたは一度も言ってないしそれといったそぶりだって見せていなかったじゃないか。そんな感覚的なことを私が気づくはずがない。先ほど口づけられた頬が今さら熱くなる。そんなまさか、仁王くんが私を?間違えても私は男だし、仁王くんとは真逆な人間だと自分でも理解している。そんな私を、仁王くんが。


「嘘でも詐欺でもペテンでもなか、本当に好いとうよ、柳生さん」
「…嘘みたいです、私も仁王くんのことが、ずっと」
「知っとる」
「え、」
「知っとるから、こうやって告白しとるんじゃよ」


あなたはずるい人だ。いつもいつも思う。そうやってペテンで相手を見透かして、気まぐれで近づいたり離れたり、相手を翻弄させるんだ。それでも、熱くなる頬が、私の高鳴る鼓動が、本当の自分の心を表しているのだからやっぱり私は仕様のない人間だ。こんなペテン師を好きになってしまうなんて。











Mr.紳士
(こんな肩書きで仁王くんと恋仲になれるなんて、)
(夢みたいです)





(0402)






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