空を飛ぶ鳥はどういう気持ちなんだろうと、ずっと思っていた。でもそれは鳥にとっては生きる術でしかなく、逆に俺たちのように歩くことができるほうが不思議なんだろう。でもそれだって、俺たちには生きる術でしかない。


「財前、めっちゃ晴れてる!」


空を見上げてフェンスをのぼり出すこの人は、まるで怖いものなど何もないように思えた。誰だって悲しみや弱さをひきつれているのに、彼には笑顔しかない。「飛べたらいいのに」今にも飛べそうな彼が言う。いつだって俺は不可能なことを不可能だと言い続け踏み出す力などなかった。ただ彼は違った。不可能なことを可能にしてきた。だから彼が飛びたいと言うのなら、俺には今すぐにでも彼は飛べるような気がした。生きる術だとかそんなものをまったく無視していたって、彼にはできそうな気がした。


「飛んでくださいよ」
「ええで、ほんまに飛んだろか?」


そう言って頭だけ乗り出していたフェンスに手をかけて、上半身ごと乗り出して、足をかけた。ここは屋上、まさか。本当に飛び降りる気なのか。焦って立ち上がる俺を余所に彼はこちらをくるりと向いて、「行くで」と言った。逆光で彼の顔が見えない。彼が今どんな顔をしているのかわからなくて、こわい。


「アイフライトゥユー!」




彼が降ってきた。










飛行少年
(ナイスキャッチ財前!)
(ほらな、俺飛べたやろ?)





(0317)

謙也HappyBarthDay!!






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