好きです、ともごもごしながら言うから、一瞬なんのことかわからなかった。いや本当は俺が今飲んでいたファンタグレープのことやと思ったし、ああ俺もやでって言って流そうと思ってた。だけど財前の真面目な顔を見てあれこれちゃうんちゃう?ファンタのことやないんちゃう?って気づいた。そして財前のもう一度くちにした好きですの言葉に続いた謙也さんのことが、っていう単語でようやく自分のことやとわかった。ファンタと間違えるとかまぬけすぎるやろ俺、って思ったけどそれよりもまずいろいろ考えなあかんことがある。このときはまだ冗談やと思ってた。むしろ冗談であってほしかった。


「いやお前なに言うて…ってちょ、」
「俺は本気ですよ」


俺はまだ言いかけてしかいいひんのに準備をしていたかのように財前の動きは早かった。俺はもう壁と財前の間にはさまれて身動きがとれない。いやとれなくはないけど財前がいるせいでとりにくい、ってこいつ近すぎやろ!


「なっ、近い近い近い」
「こうしてたら本気ってわかりますやろ」
「いやわかるもなにも、…っ!」


鼻があたるくらい近かった財前の距離は、今はもう、唇にあたたかい感触がしてしまうほど。なにがおきたんかわからんくて体がかたまった。目の前にいる財前は目を閉じていて、長いまつげが少しふるえていた。なんでやねんお前、乙女か。どきどきどきどき、心臓がうるさい。いやいやありえへんなんでやねん。乙女か、俺。









ファーストは奪われた
(かんべんしてや)





(0315)






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テーマ「人外ファンタジー」
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