「また、こんなとこでサボってたんか」
白石が名付けた白い猫は、どうやら名付け親よりも俺のほうが好きらしく、学校の裏庭に住んでいることを知っていて俺が近づくと走って俺の足元に寄り付いてきた。白石には見せない顔だと思った。だから餌をやって、あまりのなつかれぶりに白石への優越感となついてくれたことの嬉しさで部活へも行かずに木陰で一緒に寝ていた。すると上から、部長さんのご登場だ。
「この子、白石が名付けた猫ちゃんばい」
「知ってる。エクスタちゃんやで」
「かわいかね」
「何いっしょに寝てんねん」
この子から寄ってきたのに、その言葉を聞かずに白石もエクスタちゃんを間にはさんで俺の横に座った。あれ。
「部長さんもサボりと?」
「ちゃう、俺はお前を探しに来たんや」
「ならなんで座るとね」
「お前もどうせ、行かへんやろ」
「俺も眠たいねん」
そう言って隣に寝ころんで、エクスタちゃんの頭をなでる部長さん。ほら、やっぱり俺のときのほうが嬉しそうだ。そのうち部長さんはエクスタちゃんの頭をなでるのもやめて、瞼を閉じた。
「寝ると?」
「うん、ちょっとだけ」
「ふうん」
「ここ、木陰で風が気持ちいい」
ゆっくりと時間がたっていって、エクスタちゃんは俺のひざの上で寝てしまった。部長さんも、俺の隣で小さく寝息をたてていた。静かにしていたら綺麗な顔なのに、と思う。あまり自己を出しすぎないほうが、可愛いげがあるというものだ。いつもの白石には少しだけ苦手意識が残ってしまう。
「部長さんも、お疲れとね」
それでも、今だけは素直でかわいいと思えた。
見惚れたっていう口実
(その柔らかい髪に、今なら触っても許される気がする)
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