おれの飼い主 | ナノ

*不動君が普通の猫!Not半獣化


 おれの飼い主の名前は源田と言って、かなり"どんくさい"男だ。おれはキャットタワーを上から下へ縦横無尽に飛び回れるくらい身軽なのに、こいつは住み慣れた我が家の中でよく躓いたり滑ったりして、デカイ図体を床に叩きつけている(他にも色々と自分を痛め付ける様な事を繰り返してる)全く何が楽しいのだろうか。

 今さっきだって、水が出る所の上の棚を開けようとして顔面から色々受けとめていたし…因みにおれのご飯はそこにしまってあるのだが、緩めだったジップロックからご飯が少し零されたのには少し腹が立って抗議の鳴き声を上げた。


「ふーっ!(この馬鹿が!)」
「ごめんな、後で良いやつ買ってくるから許してくれ」
「んなぁ…(まじ信じらんねぇ)」
「悪かったからさ、バナナ味のおやつも買ってくるよ」
「…みゃお(それなら許す)」


 そうして呆れながら潜り込んだ炬燵にはどうやら先客が居たようで、せっかく入って丸まったと言うのに布団を捲られたせいで暖かい空間に冷たい空気が入ってくる。誰だよふざけんじゃねぇぞ、と空気の読めない布団めくりの犯人を睨み付ければ…佐久間か。

 女みたいな顔をこちらに向けて、「あきお」だなんて呼ぶこいつは飼い主の友人である。数ヶ月前に来たおれとは違って源田とは腐れ縁らしく、よくこの家に遊びに来ては数日間平気で寝泊まりする様な間柄だが…今この炬燵はおれの城なので関係ない。愛想悪く顔を背けて尻尾をパタリと揺らした。


「やべぇ源田、あきおに尻尾振られたぞ!歓迎されてる!」
「犬じゃないんだから…今はちょっと機嫌悪いんだよ」
「えぇー…んな事無いよなぁ?ほらほら、お土産買ってきたから遊ぼうぜ」
「あ、なら買い物してくる間に留守番しててくれ」
「りょーかーい」


 佐久間のお土産の言葉に反応して顔を上げると、変な鳥の靴下と目があったら気がした。確かコレはぺんぎんだっけ…なんて考えながら(仕方なく)出ていけば、嬉しそうな佐久間の顔に思わず喉が鳴る。この前のお土産のネズミの玩具は直ぐ壊れちゃったから、今度は沢山追い掛け回せるやつが良いな。

 ――しかし、佐久間が持ってきたお土産は予想以上に楽しかった。白地に黒の模様のボール型のソレは追い掛け回してもなかなか壊れないし、何より源田が好きなやつだ。同じ様な(勿論サイズは数倍デカイ)ボールを研いているのを見た事がある。


「……なぁうっ!(うらっ!)」
「ただい、ま…おおっ、良いパスじゃないか明王」
「おかえりー。サッカーボールの小さいのやったら案外気に入ってさぁ、流石お前ん家の猫だな」
「みゃうー(おかえりー)」


 何か知らないが源田と佐久間が楽しそうに(ついでに優しい笑顔でおれを見ながら)話している。そういや源田は"さっかー"の"きーぱー"で大活躍してたらしいが、普段のどんくさくて格好悪い源田を見ていたら想像がつかない。いつか試合を見れたら良いのになぁ…なんて考えながら、おれは手元から離れたボールを追い回して炬燵に再び飛び込んだ。



飼い主とおれと日常
(…炬燵から出てこないぞ)
(どうした?ボール詰まったかー)
(暖かいから出たくなくなった)


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