※現代



外の気温は30℃、きっとこの部屋の室温はもう少し高い。そんな蒸し暑い部屋でクーラーもつけず扇風機だけで屍と化しかけている男が2人。お金がないから2人で部屋を借り、お金がないから扇風機で夏を越そうという残念な貧乏学生。俺はまだ生きられそうな気がしないでもないが、鉢屋と兵助に関しては夏を越せるのかと毎年心配しているが何とか今年も生きている。兵助は仕送りもあるし実家が裕福なのもあるから部屋から出さえしなければ心配はいらないんだけど、鉢屋は実家とはほぼ連絡を取ってないからそうはいかないし、自己管理もなってないから2人で部屋を借りてよかったと毎年のことながら提案者の自分を褒めたい。
半分屍になりかけている鉢屋に冷凍庫から取ってきた棒アイスを口に突っ込む。鉢屋はアイスが溶けて手がベトベトになるのが嫌いでカップアイスを好んだが、雷蔵からの支給品なので文句を言わず食べ始めた。

昔、まだ小学生だった頃、すでにコンクリートジャングルだった故郷の夏は地面の暑さと太陽の光を十分に体に集めて無視仕切れない汗を拭いながら俺たちは夏を走っていた。ある日肝試しにはもってこいの夏でも陽が当たらない涼しい神社で鉢屋がカップアイスを食べながら日陰ぼっこをしているのを見かけ、喉カラカラで今にも干からびてしまいそうだった俺は一口頂戴しようと鉢屋のもとへ駆け寄った。(胃が細いからどうせ全部食べきれないのはわかっている)
なのに、もう鉢屋のカップアイスは空っぽで俺は子供ながらによくわからないオアシスは実は蜃気楼でした、な気分だった。絶望感を抱きながらにんまり顔の狐野郎を見ると、口の端に少しバニラのアイスをつけていたので、仕返しにキスしそうな勢いでそれを舐めて、にんまり顔で笑ってやると、鉢屋は青ざめてあからさまに嫌な顔をしてそれから一週間は口をきいてくれなかった。

そんなあっつい(暑い)夏もあったなあとつい口元が緩んでしまった。

「なに笑ってんの、勘」

「ん〜、鉢屋が俺に惚れた瞬間を思い出し笑い」

意味わかんない、惚れてないってそっぽを向いた鉢屋を引き寄せ、食べきれないであろうアイスを鉢屋の口から引き抜き、アイスをくれた雷蔵には申し訳ないけど俺はこのまま鉢屋を頂きたいと思います。暑い、暑い、暑いんだからもういっそのこと溶けちゃったらいいじゃない。









11.0729 title by 棘

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