※現代




重たい腰を上げ外に出る。まだまだ日は高く、持っているのは家の鍵とケータイとインスタントカメラだけ。俺の住んでるところは少し田舎で、国道を離れれば昼を過ぎるだいぶ前から車の通りもまばらになり、今現在自分はひとりだという現実に直面する。ひとりは嫌いじゃないしむしろ過ごしやすいんだけど、こう天気が良いと一緒にこの田舎の道を歩いた日々のことを思い出してしまう。

外は嫌いだと言ってもあいつは俺を無理矢理引っ張り出して一緒に歩いた。人を連れ出しておいて、あいつは隣で夢中になって風景の写真を撮っては俺に見せた。
俺は写真のことなんて何一つわからないから感想らしい感想なんて言えなかったけど、あいつが楽しそうに説明するもんだから、一緒に散歩するのは好きだった。それが俺が穏やかに満ち足りた生活を送れていた大きな要因だったなんてことに、きっと他の人だって、離れてから気づくのはもう世の常識。それでも人は気づかず繰り返すんだから不思議だ。(俺も人のことは言えないんだけど)


意外にも俺はメンタルが弱かったようで、身近にあったものが遠くへ行ってしまって立ち直るのに結構な時間を要した。俺はやっと重たい腰を上げた。今からあいつとの懐かしい思い出をたくさんカメラに収めるんだ。俺はあいつほど写真に拘りもプライドもないから、コンビニで買ったインスタントカメラだけど、34枚全部収められたらお前に会いに行く。


もうだいぶ待たせてるんだけど、もう少しだけ待っててくれると嬉しい。













11.0515
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