リボンをかけて綺麗に包装して。
中身は何か、お楽しみ。












幼稚園の頃の将来の夢はお花屋さん。小学校の頃は保母さん。中学の頃は先生。

今は?

と聞かれたら、すぐに返事が出来ない。

実際、あたしは進路表の紙と一対一で向き合っている。第一希望も第二も第三も真っ白だけど。

長い溜め息を吐く。いけない、幸せが沢山逃げてしまった。

一体高校は何をあたしに求めてるんだ!とバッと手を伸ばした。
窓の外には部活をしている生徒達。あの人達にもひとつずつ夢があるんだろうな。
夢を踏まえたうえで、この高校に入る人だっているわけで。

今から、夢を叶える為に大学に行く人だっているわけだ。

「おーい、日高。書けたかー?」

担任教師が教室に入ってくる。教室であたし一人が居残り。

「書けてませーん」

「先生の帰宅時間を遅くするなよー」

「だって先生、成りたいと思って成れるもんじゃないように、書こうと思って書けるもんじゃないですよ。これは」

シャーペンの芯をしまって、コツコツと紙っぺらをつつく。先生は、さっきのあたしより長く、溜め息を吐いた。

「別に総理大臣や女優になれって言ってるわけじゃないんだ。
自分の特技とかを生かせる将来のことを考えてみろ」

な?と押し付けるように言われて、教室を出て行ってしまった。

特技、ねぇ…。

立ち上がって、紙を持ちながら教室をフラフラっと出る。先生の姿はもう無い。あたしは自習室へと向かった。

自習室は殆ど使用されていない。
夕方は薄暗くて、少しだけ怖い。

「飯島、飯島」

そこの机で爆睡してる飯島を起こす。何回か呼ぶと上体が起き上がった。

「あれ、進路表出し終わった?」

「ううん。まだ」

「は?」

「飯島、あたしのどこが好き?」

瞳を覗き込むと、首を傾げられた。

「全体」

「全体って…」

それが仮にも彼氏である人の返答とは思えない。おざなり過ぎる。

好きになってもらえた所って、得意というか生かしたい部分。それを期待していたのに。

あたしは隣に飯島の隣の椅子に座る。座ると、飯島の方が断絶背が高い。

「特にどの辺とか、」

「言わないでおく。」

「何故?」

「そういうのは個人の内に秘めておくものだから。それに、俺が言ったことで日高は変わっちゃうかもしれない。
そのまんまが、好きだよ。」

進路の為に全然なって無いのは分かる。

分かるんだけど。

「(すごい、嬉しいことを言われた気がする…)」

進路の紙を握り過ぎて、クシャリと音をたてた。




20120119


Lips Drug










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