DOGs 16


アルフレッドがこの部屋を使うようになってからここにはもう随分来ていなかった。 知らないうちに物の多くなっていた客室で、みっともない喘ぎ声がやまない。

「はぁっ、ァ、ぅ…っ」
「きもちいい?」
「ん、うん…っ」

何とか頷くとアルフレッドがアーサーの膝裏を肩に乗せたまま笑う。生理的な涙にぼやけた視界で笑顔がふやけた。

「アーサーすっごいエロい。可愛いね」
「ばか…っ」

晒された秘孔をアルフレッドの指が無茶をせず出し入れする。違和感は消え、痛みも感じない。ただ疼くような快感がじくじくと身体を襲う。シーツをきつく握りしめた。

「うぅ〜〜〜…!」
「ああ、うん。すっごいエロい画だぞ」
「うあっ!やだ…やだぁ……っ、おっまえ、ねちぃ!」

さっきからほぐすのに時間をかけすぎだ。この前見つけられた弱い部分を何度も攻められて、腰がびくびくと跳ねる。
申し訳程度の赤く色づいた胸の突起を舐められ固く反り返ったアーサー自身には指が絡み、理性を膜を薄く剥ぐようにぼやけていく。

「でも気持ちいい方が良くない?」
「そ、そりゃ…」
「じゃあ口答えしないの」

額、鼻先、唇と口づけられて自然と目を瞑った。甘やかされてる。ほんの少し前まで想像もできなかった状況に頭がほやほやして、気持ちよくて、何でも許してしまいそうで少し怖い。

「俺のこと好き?」
「すき」
「あーなんかやばい」
「幸せ?」
「ものすごく」
「…お、おれも」
「やっぱ今日のアーサーかわいい」

ぎゅっと抱きしめられて抱き返す。汗ばんだ肌が密着してひどく安心した。

「ね…もういい?」
「うん。お前のやりたいようにして…ていうか、…してほしい」

そっちの方が愛されてる感じする。

「…君、なんてこと言ってんの」
「え?あ、ごめ」
「謝らないで、否定もなし。…本当、夢だったら承知しないよ」

熱いアルフレッド自身が散々慣らされたアーサーの後孔にあてがわれて、全身が期待にうち震えた。
またひとつになる。

「いあぁ、ぁ…!」
「くっ…」

圧迫感と熱さに目の奥がチカチカする。たった2度のセックスでは後孔への刺激に慣れないらしい。それでも。

「なぁアル…きもちいい…っ?」
「すっごいきもちいいぞ」
「そ、か…なら、いいや…」

幸せな雰囲気に飲まれて微笑む。これじゃ現実に戻ってこれそうにない。

「キスして」
「ん」

望まれるままもう何度目か分からないキスを重ねる。その拍子に中を抉られて思わず背に爪を立てた。ひどく食い込んだようで、感触からして爪が肌を傷つけてしまったらしい。

「あ、悪ぃ!」
「いや……でも、これで夢じゃない証拠が出来た」

小さな痛みに顔をしかめながらやけに幸せそうに笑ってくれて、思わず涙が出てしまった。










起きたら上半身が裸のまま抱きしめられていて一通り慌てる。

「離せっ!」
「んー…」

まだ起きないらしい。力強い腕が離すまいとアーサーを抱きしめている。背中に規則正しい心音が伝わって、アーサーの鼓動はますます早くなった。


(お、俺…愛されてる…!)

「……君、どんだけ心臓早いのさ!あーもー我慢できないっ」

しかしその幸福感も長くは続かない。突然ぬははと笑い出されて、一気に身体中熱くなった。どうやらタヌキ寝入りにすっかり騙されたらしい。

「お前…っ!」
「怒らない怒らない」

髪に鼻をうずめられ、押し黙る。変な感じだ。誰かに、アルフレッドにこんな風に抱きしめられるなんて。

「夢じゃないのか」
「うん。背中痛いし」
「俺も腰重い」
「とりあえず、まだ寝ない?」
「んー…」

耳元でゆっくり囁かれてまた眠気が蘇る。カーテンからは細く朝日が差していて、瞼が重い。


「…………待て、今日は何曜日だ」
「チッ」
「舌打ちすんなばか!えーとお前が出てって土日月…って今日火曜じゃねえか!何でこんな休日気分でいるんだよ!」
「わーかったよ。しょうがないなぁ…」

グッとアルフレッドが起き上がる。その背には小さな爪痕が赤く走っている。

「――うん。俺のもんだ」
「へ?」

答えは返さず立ち上がってカーテンを開けた。眩しい朝日に目を細めると、するりと首に腕が回る。


「おはよう」


頬に送られたおはようのキスが幸せの象徴のように思えた。


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