染み付いた独特の匂いに病院だと気づいて、やっと目覚ました。

見慣れない病室だ。あまり身体を動かせなくて目線だけで部屋を見回すと、疲れた顔をした男が椅子に座って眠っているのが見えた。
灰がかった金髪が空いた窓から入ってくる風によって揺れている。見たことのない綺麗な顔だった。


ふと、その目が開く。うつろな目は何度か瞬きを繰り返したあとぼんやり自分を捉え、目が丸くなった。
暫く動けなかったらしい青年は、やっと浮かされたように立ち上がりベッドに近づいてくる。

「気が付いた、のか?」

肯定の意を込めてほんの少しだけ頭を揺らすと、青年は花がほころぶような笑みを浮かべた。かなり大事に思ってくれているらしい。

「よかった、大丈夫そうだな」

心底安心したように青年が言って、さすがに申し訳なく思う。多分次の自分の言葉に彼は傷つくだろう。きっと優しいだろうから。
それでも困っているのは自分も同じなのだ。


「ありがとう。…それであの、君は…誰なんだい?」


久しぶりに出したからか掠れた声に笑っていた彼の顔が強張る。泣きそうに見えて、やはり言うべきではなかったかと少し後悔した。









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