うちに来ないかと言われたので遠慮なくお邪魔した日曜日。わざわざ玄関まで出迎えてくれた時点で若干おかしいとは思ったけど、両親が留守だと聞いて合点がいった。はいはいそういうことですか、呆れながらも部屋に上がり込んだのだから俺も大概である。
せっかくの休日を外にも出ずただだらだらと、時折汗を掻くようなことを繰り返して。なんとも気だるいルーチンだったがそれでも先輩は楽しそうに過ごしていた。俺の方は今、身体が疲れを訴えたせいでベッドに伏せている状態だけど、普段布団でチビ達と雑魚寝しているもんだから、先輩のふかふかベッドを一人で占領出来るのは、これはこれで気分が良い。

「狩屋ー、アイス食うか?」
「良いんですか?いただきます」

おまけに先輩は甲斐甲斐しくあれやこれやと労って世話して色々と提供してくれるし。先述の通り何だかんだで自分の意思で俺はここまで来て今もベッドに満足しているのだから、先輩がこんな風に接する必要ないとは思うんだけど、そこはあえて言わずに有難く受け取っておく。

「バニラとチョコ、どっち食うか」
「んーと……チョコ!」

返事だけは元気だな、笑いながら先輩はカップのアイスを丸ごと一個俺にくれた。寝転がって食べていいか尋ねたら、零さないようにとだけ注意される。まったく俺をいくつだと思ってるんだか、まぁ良いけど。
ぬくい布団の中で食べるアイスは格別に美味しい。あ、これチョコチップ入ってるんだ。どうりでうまいわけだ。

「あー…帰りたくない」
「却下。お前ん家厳しいだろ。こっちも親帰って来るし」
「そうですけどー…あーやだ俺ずっとここいたい…アイス食べてごろごろしたい…」

ごろり、身体を反転させて仰向けに寝転がる。温もりの中に身体が沈んでじわじわとベッドに侵食する、ああ気持ち良い、ずっとここにいたい。そんなこと出来ないって、帰るのが遅くなると瞳子さんも心配するってことぐらいわかってるけど。
なんてったって、先輩の周囲はいつも温かいのだ。柔らかくて甘くて優しい。お布団もアイスも、ほんの数回会っただけの母親らしき女性も素敵な人だと感じた。ま、先輩を育てた人なんだから当然っちゃ当然か。
先輩は凄く恵まれてて、なのに嫌味がなくて、だから傍にいて心地良い。お日様園が嫌いだとか、園を出たいとか、そんなことは思ったもことないしするつもりもないけれど、でも先輩とならずっと一緒にいたいって、ちょっと本気で思ってたりする。言わないけど。

「先輩、」
「ん?」
「……やっぱバニラもちょうだい?」

すっかり空になったアイスのカップを片手に翳せば先輩は少し考えて、もう一仕事したらなと言ってにんまりわらった。うわ、まだするつもりなんだこの人。やっぱ良いですって言ったら済むけど、さてどうしようか。どうしようか、等と考えておきながら、数分後には先輩をベッドに上がらせてしまうことは、目に見えているんだけど。
なんたって、せっかくの休日はまだまだ長いのだ。心地良い空間に、もう少し浸っていたって罰は当たらないだろう。



【そしたら宇宙にいくわ】

─────────
title by 彼女の為に泣いた
ごまみリクの蘭マサちゃん!遅くなってごめんなさい;;
こんなんで良ければ貰ってやってね!これからもよろしくですぎゅうっ