剣城くんがおかしい。喋らないのはいつものことだけど、なんて言うのかな上の空って感じ。珍しく、本当に珍しく、剣城くんから誘われて一緒に下校してるのに、俺の話に対する相槌すら気の抜けたものばかりで。なんだよ、聞く気のない奴に話振るの結構キツいんだけど。でも今会話を詰まらせたら嫌な意味での沈黙が流れそうで、俺だって折角剣城くんから誘われたんだから(本っ当に珍しいんだよ?)気まずい空気なんて作りたくないし、こうしてべらべらと自分でもくっだらねぇって思うような話題を振り続けている。

「でさ、そこで天馬くんが」
「………なぁ狩屋」
「ん?」

お、やっと剣城くんが相槌以外で口開いた、さっきまでへぇだのあぁだのしか言わなかった剣城くんがやっと主語と述語の整った文章で話そうとしている!ほんの少しの期待を込めて俺は会話を中断し剣城くんの顔を覗き込む。
右に左に、首まで振りそうな勢いで視線を彷徨わせた剣城くんは何度か溜め息を漏らして俺の瞳から逃れようとしたけど絶対無理、だって俺はこの瞬間のために今まで機関銃のように話し続けていたんだもの。穴が開きそうなくらい長い間剣城くんを凝視していたら、やっと折れたのか、口を開いてくれた。

「……天馬と、仲良いんだな」
「………は?」

何それ、何が言いたいんだよ。眉を顰める俺の前でいやだから、って剣城くんは続ける。いつも天馬くん達と楽しそうに話してるし、一緒に下校してるし、今だって天馬くん達の話ばっかしてる、なんて剣城くんは並べ立てるけど。あのさ天馬くん達同じクラスだからよく喋るだけだし楽しそうっつったって大体表面だけだし、誘われるから一緒に帰ってるけど今日みたいに剣城くんに誘われたらあの辺との下校なんてソッコー断るし、つーか剣城くんはいつもお兄さんのお見舞いに行ってるから俺いつも我慢してんだよ?最後のなんて完全に検討違い、そりゃ天馬くん達は嫌いじゃないけど、なんで剣城くんに、そう他でもない剣城くんに、そんなこと言われなきゃいけないわけ?
そう反論しようと顔を上げて、ふと俺は目をまぁるくした。顔を逸らしてる剣城くんの耳がほんのり、赤い。あれ、えっ、ねぇこれって、もしかして、もしかすると。

「つるぎ、くん」
「なんだよ」
「妬きもち?」
「!」

一瞬にして頬に差し込まれる紅色。えっうそまじで?いやそれだと全部納得出来るけど、でも、あの剣城くんが?俺なんかのことで、こんな顔赤くして、ちょっとやめろよこっちまで身体熱いんだけど。とどめに剣城くんが小さな、でもあの低い声で、悪いか、って呟いてて、ああもうやめろって心臓爆発しそう。

「……狩屋?」
「………剣城くんの、ばか」
「はぁ?」

剣城くんは意味わかんねーって顔してるけど、それはこっちの台詞だよ。こんなに心開いてるつもりなのに、なんでわかってくんないんだよ。あぁ、もう、言いたいけど、罵ってやりたいけど、いまいち頭が回んない。でもこのままにしておくのは嫌で、だから別れ際に、俺は一言だけ、剣城くんにとっておきの言葉を掛けてやった。
「剣城くん」


「明日の帰り、付き合ってよ」


目を見開いた剣城くんの返事を聞かずに俺は意気揚々と園までの道を走る。俺が何を言いたいのか、せいぜい悩んでたら良いんだよ、ばーか。



【思考回路を独り占め】

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あむへ!!剣城が嫉妬する京マサです
なんか剣城異様にヘタレになったごめんなさい
リクありがとうねずっきゅん!大好きだよあむ