ベッドに伏せるべき人間が起き上がり、健康極まりない自分がシーツに押し倒されている。なにこの状況、ぱちぱちと瞬きを繰り返している間に彼は俺の髪をその太陽のように温かい手でゆるゆる撫でて首元に顔を埋めた。やばい。何がやばいって、なんかやばい。

「太陽くん、」
「安心してよ。何もしないから」

そうは言ってもこの体勢、安心しろなんて無理がある。それに俺と太陽くんは一応、一応だけど、お付き合いをしているわけで、何もしないとは言われても、心中はぐるぐると、期待と不安が入り交じって複雑だった。いや嫌ではないんだけど、決して。
太陽くんはまるで犬のように俺の首元に顔を埋め鼻を擦り寄せた。なんだかくすぐったくて酷く恥ずかしい。気持ち悪いのに心地良い。一通り満足したかと思うと、壊れものを扱うかのように優しく優しく俺を抱き締める。なにほんと、どうしたの、ねぇ、

「俺が、狩屋くらい身体丈夫だったら良かったのに」

ふいに口を開いた太陽くんはそんなことを呟いた。俺はぱちぱち、再度瞬きをする。俺ぐらいに?そう狩屋ぐらいに。あんな風にぐるぐると、目が回りそうなくらい元気に動き回っても平気なくらい丈夫な身体になりたかったと太陽くんは言う。なんだそんなの、今更じゃん。なんでそんなこと言うの。

「そしたらこの先のことだって、躊躇わずに出来るのに」

俺の問い掛けに太陽くんは一点の曇りもない瞳を向けそう答えた。首筋にキスを落とされて、口から変な声が出そうになった俺は固く唇を結ぶ。病室から全然出てないくせに何処でこんなこと覚えるんだよまったく。
そのままするりとシャツの中に侵入しようとした手を俺は慌ててひっ掴まえた。嫌じゃない、嫌じゃないんだよ?でも、だけど。

「……太陽くんは、ゆっくり良くなったら良いよ」
「どうして?」
「そしたら俺も、その間にきっと大人になれるだろ」

ゆっくり大人になろうよ。無理せずゆっくり、太陽くんの身体が丈夫になっていくみたいに、さ。
なんて、そんなのは言い訳で、実際俺はまだまだ子供だから、その先に進めないだけなんだけど。俺がそう苦笑いしていたら、太陽くんは顔を真っ赤にして何故か再度俺をぎゅっと抱き締めた。狩屋、すき、だいすきって、覚えたての言葉を喋る赤子みたいに繰り返す。もう、なんなんだよ、今日の太陽くんおかしいよ?そんなおかしな太陽くんが好きな俺も、大概おかしいんだろうけど。



【未発達な僕等】

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璃子ちゃんリクのほっこりした雨マサでした!ほっこりしてるかな…うむむ
リクありがとうございました〜璃子ちゃんのみお持ち帰り可能です!