ねぇ霧野くん、ここに来てるってことは、マサキがどういった子なのかぐらい想像ついてるだろう？マサキが話してないなら俺からは詳しいことは言わないけど、君が思ってるよりもずっと、彼はつらい思いをしている。傍にいた俺達はそれを良く知ってるつもりだ。
君を嫌いだの、マサキを奪って憎々しいだのそんなこと言うつもりは一切ない。緑川じゃあるまいしね。だって、ここに来たばかりの時は愛されることをあんなに拒絶していたマサキが、他人を表面的にしか受け入れられなかったマサキが、こんなにも好きになって、心を開いた相手だから。マサキが今幸せなのは他でもない、君のおかげだってことは、間違いない事実なんだから。
ただ、ねぇ、霧野くん。マサキを好きだと言うなら、ひとつだけ俺に約束してよ。俺達だって長い間大切に大切に愛した子を無条件に引き渡すなんて出来ないんだ。面倒かもしれないけど、これだけ約束して。
絶対、絶対に、マサキを捨てないで。
何処にも置いて行かないで、一人にしないでやってほしい。
今度誰かにいらないって言われたら、彼はきっと、今度こそ壊れてしまう。せっかく治したひび割れた心が、今度こそ完全に、粉々になって崩れてしまう。
そうなったら────俺は、俺達は絶対に、君を許さない。持てる限りの力全てを使ってでも、君に報復する。冗談じゃない、本気だ。俺達にとってそれぐらい、マサキは大切な子だからね。覚悟した方が良いと思うよ？
ねぇ、それでも、あの子を好きになってくれるかい？
「………そっか、よかった」
「ありがとう。」
返事はなかった。けれど、言葉にしなくても、目を見ればわかる。
だって君のその目、俺の大好きなあの人に、良く似ていたからね。
【不言実行】
─────────
准さまリクのお日様園＋蘭マサでした。四字熟語シリーズが一番好きだと仰ってたので更新しましたが、実に五ヶ月ぶりとか笑うしかない…すみませんすみません;;お気に召して頂ければ幸いです。
|
