short story | ナノ


▼ ナイルの川のように


「お嬢様とてもお綺麗ですわ」


真っ白な品の良い部屋に1人の老女と1人の少女がいた


少女はスカイブルーのドレスを着せられ髪にはキラキラとした輝き放つティアラが飾られていた



「ばあや、私・・・・・・」

「お嬢様泣いてはなりません。せっかく綺麗にお化粧しましたのに取れてしまいますわ」

「ばあや・・・・」



肩までの黒髪の男性が部屋に入ってきたため名無しから「私やっぱり婚約できないわ・・・」という言葉が発せられることはなかった


「ナナシ綺麗だ」

『ライアン・・・・・』

「みんな君が来るのを待ってる」


ライアンは名無しを椅子から立たせ腰を抱きエスコートする


『ライアン・・・私、あなたと・・・』

「ナナシ。ぼく達の婚約いや、結婚はみんなが望んでいることだ。何よりぼくは君を愛している」

『ライアン・・・』


絶対に婚約解消などしないという眼差しのライアンに名無しは何も言えなくなってしまった
そんな名無しのブラウンの髪をライアンは愛おしそうに撫でた


「名無し。君がどんなに嫌だと言おうとぼくは君を離しはしない。何があってもだ」

『ライアンでも私は』

「君がぼくを愛していなくてもだ」

「ライアッ・・・!?」


ライアンは名無しの顎に手を置き上を向かせ口付けをする


『ッ・・・・・やめてッ』


名無しはライアンの胸を押し自分から離す


「名無し!!」


ライアンは離れようとする名無しの腕を瞬時に掴み自分の胸に引き寄せ抱きしめたが名無しは抵抗した


『ライアン離してッ』

「離さない!離すものか!!」

『ライアンッ』

「君は近い将来ぼくの妻になるんだ!君が大学を卒業したら籍を入れていいとご両親にも了解を得てる!」


ライアンの言葉に名無しは言葉を失った


「だから君がぼくから離れることは出来ない」

『ライアンッ!そんなこと私は知らないわッ』

「君には言わないようにぼくがご両親にお願いした」

『どうしてッ』

「君を愛しているからさ」

『酷いわッ』


名無しは両親までライアンに手を貸していたことにショックを受けライアンが伸ばしてきた手を「触らないでッ」と言って叩き走り出した
名無しは名前を呼ぶライアンの声など気にせずひたすら走る
ライアンは呼び止めても無駄だと思い名無しを追いかけるため会場を出る


















『はぁはぁ』


いつの間にかナイル川まで走ってきてしまった名無しは川岸にある木に手をつき息を整える


『はぁはぁ・・・っ・・・』



名無しはドレスが濡れることなど気にすることなくその場に座り込む
ナイルの水が名無しのドレス濡らしていく



『どうしてっ・・・・・』



名無しにとってライアンは初恋の相手だった


今でも想う相手だった


だから決してライアンを愛していないわけではなかった

寧ろ愛していた



ただ名無しには夢があった


医師になること──────



医師になり人の命を助けること



愛しているライアンと結婚するか夢を取るかを考えた名無しは














夢を選んだ




結婚は直ぐでなくてもいい

しかし夢は結婚してしまえば叶えられなくなってしまう


結婚してからでは遅いのだ



最初は両親も反対していた

でも最近では何も言わなくなり応援してくれていると思っていた


でも違ったのだ



両親は大学を卒業したら名無しをライアンの妻とさせるとライアンと約束していたのだ


だから名無しに何も言わなくなったのだ




『ひどいわッ・・・』

「ナナシッ!!」

『ら、いあ・・・・・』



走ってきたためか息を切らしたライアンが名無しを抱きしめる


「見つかってよかったッ」

「らい、あん・・・わたし、あなたを愛して、いるのっ・・・でも、でもっ・・・夢を諦められないのッ・・・・・・医師になって人を救いたいのッ」


名無しはライアンの服を掴みライアンの胸で涙する


ライアンはそんな名無しの背中と頭においている手に力を入れ強く抱きしめる


「すまないッ──────君の夢を奪うつもりなんてなかったんだッ」

『ッ・・・・・・・・』

「君が夢を叶えたいというなら叶えるまでぼくは待つ。君と婚約していることには変わらないんだ。君は夢を叶えた後でぼくと結婚する。それでいい。だから離れていかないでくれッ」

『待って、て・・・くれるの?』

「もちろん。愛する人の夢を潰すなんてぼくにはできないよ」

『ライアンッ』



名無しはライアンの背中に手をまわす



「ナナシ」


ライアンに名前を呼ばれた名無しが顔をあげるとライアンは自分から名無しを少しだけ離し「愛してる」と呟き名無しの唇にそっと優しく甘い口付けをした








太陽は優しい光を放ち

ナイルはキラキラとひかっていた




2人を祝福するかのように──────




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