▼ 006
ベルサイユ宮殿城門でマリー、メルシー伯そしてノアイユ伯夫人に見送られミィシューレへ帰ろうとしていた
「シシィ・・・本当に帰ってしまうのね───寂しくなるわ・・・」
『マリーごめんなさい。お父様やお母様だけでなくお兄様達ももう帰ってくるように手紙を送ってきているから・・・』
「そうなの・・・」
『マリー。私たちは離れていようと親友よ。それは、何があっても変わらない。貴女は私の幼馴染であり大事なたった1人の親友。だから私は離れていても貴女を見守っているから』
「えぇ!!私達は何があっても親友よ!!私もベルサイユから貴女を見守っているわ!」
『貴女には私の他にもこのベルサイユにメルシー伯やノアイユ伯夫人それにオスカル様にアンドレ様もいるわ。きっと、みんなが貴女の力になってくれるわ。ね、メルシー伯、ノアイユ伯夫人?』
寂しがってくれるマリーと抱きしめ合いながらメルシー伯達に聞くと2人はもちろんですと言った表情でいた
「私メルシー伯はアントワネット様の味方でございます」
「もちろん私もですわ」
『だからそんなに寂しがらないで、私もミィシェーレに帰るのが寂しくなってしまうわ?私は貴女の笑顔が好きよ。だから笑顔で見送って』
「えぇ。もちろん笑顔で見送るわ。シシィ・・・また会いましょうね・・・絶対にまた。」
『もちろんよ。またマリーに会いにくるわ。───また会いましょう』
豪華ではないが品があり威厳を感じる王家に相応しい馬車に乗り込むエリザベートにアントワネットは手を大きく振る
「シシィ元気でね!お手紙は書いてちょうだいね!!」
『えぇ!沢山書くわね!』
はしたのうございます!とノアイユ伯夫人はめくれてしまっているドレスの袖を落ちないようにしていたが
アントワネットはお構いなしに馬車が見えなくなるまでその場で手を振っていた・・・
ベルサイユを離れたエリザベートを乗せた馬車はパリの街を走っていた
マリーは結局、私がいる間にデュ・バリー夫人に声をかけなかった・・・
歴史通りなら国王陛下の怒りを買うことにならなりお母さまであるマリア・テレシアに迷惑をかけないよう
新年の宴で最初で最後の言葉をかけるはず・・・・
キキィーーーッ
『っ』
「大丈夫でございますか、エリザベート様」
『大丈夫よ。ばあや』
心配してくるばあやに心配しないでというと私の専属御者であるルカが怪我がないか確認を小窓からしてきた
「エリザベート様申し訳ございません!!お怪我はございませんか!」
ルカは今までに事故を1度も起こしたことがなく私だけでなく両親も信頼している
そんな彼が事故を起こすなんて───
『大丈夫よ。それにしても何がありましたの?』
「それが、少女が突然出てきまして・・・」
『え?!少女に怪我は!』
まさか轢いたりしてないよね?!いやルカのことは信頼してるし大丈夫だとは思うんだけど
とにかく安否を確認しなきゃと私は馬車から降り女の子に駆け寄った
『怪我はない?!』
「も、申し訳ございません!!」
馬のほんの少し前に尻餅をついていた少女は私を見ると慌てて膝をついた
怪我してるかもしれないのに膝なんてつかないでよ!!
慌てて少女を立ち上がらせ再度怪我がないか確認する
『痛いところは?!』
「大丈夫です!!ほ、本当に申し訳ございません!!」
『謝るのは私の方だわ。さ、顔をあげて』
少女、ロザリーは顔を上げそして、エリザベートの美しさに見惚れた
『本当にごめんなさい。私はエリザベート。貴女のお名前は?』
「ろ、ロザリーと申します・・・私が馬車の前に出たから」
『どうしてそんな危ないことを・・・』
「そ、それは・・・」
『怪我だけでは済まないかもしれないんだから・・・だからもうしてはダメよ?』
「はい・・・ごめんなさいっ・・・こうしたらお金を恵んでいただけると思って・・・もう絶対にいたしませんッ」
ロザリーに治療代としてお金を渡し馬車に戻ろうとするとばあやは少し怒りルカは申し訳なさそうにしていた
「エリザベート様!なかなか戻ってらっしゃらないので心配いたしました!」
「エリザベート様申し訳ございません!!」
『ばあやごめんなさい。ルカ貴方は悪くないわ。ロザリーも怪我はなかったしミィシェーレに向けて出発しましょう』
こうして、エリザベートを乗せた馬車はミィシェーレに向けて出発した
これが、エリザベートとロザリーの出会いであった・・・後に再会することになるなど2人は思ってもいなかっただろう・・・
後に再会するときロザリーはエリザベートが貴族ではなく、王女だっということを知ることとなる・・・
「エリザベート様今日は何処かの宿にでも止まりましょう」
『そうね、でもここらへんに宿なんてあるのかしら』
ルカにばあやが声をかけ馬車を一旦止めてもらう
小窓から顔を出したルカとばあやが話しばあやよりはルカの方が探すのが早いと言うことでルカが探しに行くことになった
ちなみに私が行くというのは早々に却下された
「少しお待ちください。近くに宿があるか探してまいります」
『もう暗いし気をつけてね』
「はっ!!」
ルカが行くとばあやがストールを肩にかけてくれた
自分だって寒いだろうに私にかけてくれるばあや
自分だって肌寒いだろうに
「寒くはございませんか?」
『大丈夫よ。ばあやの方こそ寒くはない?』
「えぇ。ばあやも大丈夫でございます」
本当は寒いでしょ?と聞いてもばあやは絶対に言わないしストールの半分こも絶対にしてくれないのを長年の付き合いでわかっているからありがたくストールを肩にかけたまま窓から外を見た
出発するのが予定より遅くなってしまった関係で宿があまりないところまでしかくることができなかった
ミィシェーレにつくのは明日の夜になりそうねと考えていると
馬車の外にある人影がだんだん近づいてきていることに気がついてばあやに言おうと思ったその時
ガチャッとドアが開いた
「なにやつ!!うちの姫様には近づけません!!」
「あ、いや馬車が停まっていたので何かあったのかと思いまして・・・けして、怪しいものではありません。私はスウェーデン貴族のハンス・アクセル・フォン・フェルゼンと申します。」
『フェルゼン?』
「はい。」
まさかの展開に思わずフラッときてしまった私をばあやが支えてくれた
「姫様!!大丈夫でございますか!?」
『大丈夫よ・・・』
フェルゼンがフランスへ来るのってこんなにすぐだったの?
そんな詳しく覚えてなんてなかったしまさか私がマリーより先に出会うだなんて
フェルゼンが「大丈夫ですか?」と心配してくれるけどそれに返事をする気力なんてなかった
だって誰がこんな展開になるだなんて想像した?
誰も想像なんてできないでしょ
どうするべきか悩んでる私の身体が少し冷たくなっていることに気がついたばあやが悲鳴をあげた
「こんなに冷えてしまわれて・・・!!まだ宿は見つからないのかしら!!」
「宿をお探しなんですか?それなら、見つかりませんよ。ここら辺に宿はありませんからね。」
「まぁ!!なんということ!!このままでは姫様が凍死してしまうわ!!」
「よろしければ私の家に来ませんか?」
フェルゼンの提案に私だけでなくばあやも驚きの声をあげた
「貴方の家に!?」
「1番近い宿よりもここから近いですし何よりもう暗くなってきました宿を探すよりは安全かと」
確かにフェルゼンの言う通りその方が安全ではある
それにフェルゼンであればこちらに危害を与えることもないはず
私の身体が冷えてきているくらいなんだからルカやばあやの身体はもっと冷えているはず
それなら───
『ばあや、今日はフェルゼン様の家にお世話になりましょう?このままではばあややルカまで凍えてしまうわ・・・』
「・・・ではルカが戻ったらフェルゼン様の家にお世話になりましょう。よろしいですか?」
「えぇ。もちろんです。」
『フェルゼン様も馬車に乗って共にルカが戻るのを待ちましょう?』
「ありがとうございます」
フェルゼンが馬車に乗ると
「ところで、お名前は?」
『すみません。名乗りもせずに・・・私はエリザベートと申します』
「エリザベート様ですか」
『ふふ、様はよしてください。よろしければシシィと呼んでくれませんか?』
「シシィですか?」
『えぇ、親しい方にはそう呼ばれていますの』
「姫様?!」
それよりばあや外では名前で呼んでっていつも言ってるのにさっきから姫様って呼んでるし
親しくしておいて損はないはず
だって彼もマリー・アントワネットの人生に大きく関わるのだから
『恩人の方なのよ?いいじゃない』
「ですが!!」
「では私のこともハンスとお呼びください」
『ふふ、ではお言葉にあまえてハンスとお呼びしますね』
「はい」
暫くフェルゼンと話してるとガチャリと扉が開いた
「お待たせしてしまい申し訳ありませんでした!!申し訳ありません、宿なんですが・・・」
『ルカ!遅かったから心配したのよ!』
中世には携帯があれば便利なのにとこの世界にきて初めて思った
ルカにフェルゼンが今夜は泊めてくれることを説明するとルカは驚いていたけど理由を説明したすぐ納得してくれた
「御者を勤めておりますルカと申します」
「よろしく、ルカ。私はフェルゼン」
「フェルゼン様・・・ありがとうございます!宿を探したのです見つからず・・・」
「一番近い宿でもここからは3時間はかかるからな───では、屋敷に行こうか・・・」
「あ、私が御者を務めます!!」
「あぁ、だが屋敷の道のりが・・・」
「説明してくだされば大丈夫です!!」
「では、頼むよ。まだ、この先をずっとまっすぐだから」
「わかりました」
ルカが馬車を発車させ30分程でフェルゼンの家に到着した
「さぁ、足元に気をつけて・・・」
『ふふ、ありがとうございますハンス』
手を出してくれるフェルゼンの手をありがたく借りてるとばあやが「おっほん!」と咳払いした
『あ、ばあやも足元に気をつけてちょうだいね?』
「大丈夫でございます!ばあやは転んだりなんかしま・・・」
ばあやは馬車の階段で足を滑らせた
だから気をつけてって言ったのに!
『ばあや大丈夫!?怪我はない!?痛いところは!?』
「大丈夫でございます・・・」
『怪我がなくてよかったわ』
「申し訳ございません・・・」
ばあやとそんなやりとりをしているとフェルゼンが微笑ましそうに笑っていた
「ふふ、お二人は仲がよろしいんですね」
「もちろんです!!私と姫様の絆は誰にも壊せません!!」
ばあやはほんとにエリザベートバカすぎる・・・
幼い頃からお世話をしてくれてるばあやはエリザベートが1番だと思ってる
まぁ、ばあやとはミィシェーレ王家の中で1番信頼関係があるとは思うけど
てか家デカすぎる 貴族半端ないわ・・・
1人1部屋を与えてくれるなんてハンス・アクセル・フォン・フェルゼンさすが名門貴族───
フェルゼンに貸してもらった部屋でゆっくりとしているとコンコンとノックがされた
『はい(ばあやかしら?)』
ガチャッと扉を開け部屋に入ってきたのはここの家主であるフェルゼンだった
『ハンス?』
「シシィ少し話でもしないか」
『えぇ、まだ眠る時間ではないし是非』
部屋だけでなく食事もご馳走になってしまったし話すくらないならと思いフェルゼンは私の前にあるカウチに腰をかけた
「シシィは今までは何処に?」
『私は親友の結婚式でパリに行っていたの。ハンスは?』
「私はドイツなどいろいろな国を遊学していたんだ」
『遊学を』
そうだフェルゼンは色々な国を遊学してそのうちの一つであるフランスでマリーに出逢い惹かれていく───
「あぁ、とても刺激を受けられるものだったよ」
『次は何処に行かれるかもう決まっているの?』
フランスにいる時点でフランスということはわかっているけれど───
「次に行くのはスイスその後にシシィのいたフランスへ行く予定なんだ。フランスで学んだ後はスウェーデンに帰る予定だよ」
『フランスに・・・では、もう会うことはないかもしれませんね。私がフランスに行くことは留学でもしない限りないもの・・・女である私は何処かの家に嫁ぐことが家のためにできること───ハンス、貴方とも明日になればお別れだわ』
まぁ、そうは言っても私は結婚はまだするつもりはないからお城で暫くはゴロゴロ過ごします
ばあやに怒られそうだけど
生前留学とか憧れてたけど今は遊学なんてしたら疲れそうだし自国が1番
大丈夫ちゃんとミィシェーレでやれることはやるから
それにしても眠くなってきた───あくび出そう
ポロ・・・エリザベートの瞳から涙が1粒零れ落ちた
やば、あくび我慢してたら涙が
「シシィ…!!」
ギュッとフェルゼンがエリザベートを抱きしめた
『ハンス?!』
「私は…私は貴女を一目見た時から貴女を愛してしまった!!」
『!!?? ダメよ!!』
「なぜ!!」
いきなり何をいうんだこの人!!
いや確かにこの顔綺麗よ?!でも一目惚れってそんなベタな!!
確かに私もちょっとかっこいいなとは思ったよ?!でもさすがにダメでしょ!!
『そ、れは・・・わ、私がミィシェーレ王国の王女だからです!!だから貴方が私を愛してくれても私はそれに答えることはできません!!』
「エリザベートが、ミィシェーレの王女・・・」
フェルゼンは流石に私がミィシェーレの王女だとは想像してなかったのか驚いていた
これならなんとかなるかもと思い私はそのまま続けて言った
『私はいずれ、王家のためお国のために何処かへ嫁ぐことになるわ。だから貴方の想いに答えたかったとしても答えることは出来ないのよ(私もマリーと同じように・・・)』
「エリザベート、私は貴女がミィシェーレの王女だとしてもこの恋心を貴女を愛しているという心を消すことはもう出来ません・・・貴女を心から愛しております」
くっ、フェルゼンイケメンすぎるっ!!
私もこんなイケメンとお付き合いできるならしたいけどフランスにはできれば直接は関わりたくない!!
それに歴史を曲げてはならないという気持ちと親友のマリー・アントワネットを裏切りたくないという気持ちそして王家のためお国のためになる結婚をしなければならないという気持ちがごちゃ混ぜになってる
私が王女ではなく貴族の娘であれば
あなたが歴史の中でアントワネットと関わっていなければ
フェルゼン貴方はきっとマリー・アントワネットに出会ったら私への気持ちを忘れるそんなことになったら私はきっと耐えられない
それなら──────
『ハンスきっと貴方がフランスの王太子妃にあった時に私への思いはなくなるわ』
「そんなことはない!!私は一生貴女以外を思うことは決してない!!」
『では、私と賭けをしませんか?私と再会した時に貴方の心が私にまだあったなら私は身分を王家を捨ててでも貴方のもとへ参ります』
再会前にマリーと出会えばきっとマリーに気持ちが移ってるはず
私の提案にフェルゼンはよほど自信があるのかあっさり頷いた
「わかりました。貴女を手に入れるため私フェルゼンはその賭けに乗りましょう。私は必ず約束を果たし貴女を手に入れます。その時は私の妻になってくれますか?」
『勿論です。女に二言はありません。貴方の心が私にあり賭けに貴方が勝ったときには私は貴方の妻になり貴方を私のすべてをかけて愛します』
「愛しています我が愛しの王女エリザベート」
『ハンス・・・』
目をそっと閉じフェルゼンと口付けを交わした
翌日
「シシィ、また君に会えると信じて私は待っているよ。私の最愛の青薔薇・・・」
フェルゼンの言葉に私は答えることができなかった
昨日の私はどうかしてた───フェルゼンとキスをするだなんて
「姫様、出発のお時間です」
「わかりました。ばあや先に馬車に乗っていて」
「姫様」
『心配しないで、すぐに行くわ。だから先に馬車に乗っていて』
「・・・かしこまりました」
渋々と言った様子でばあやが馬車に乗ったのを確認してからフェルゼンの方をむいた
『本当にありがとう』
「必ずシシィのもとへ参ります」
『またご縁があったら会いましょう───お体に気をつけて』
「エリザベートも」
エリザベートを乗せた馬車が出発し見えなくなるまでフェルゼンはその場から離れなかった
ああ、愛しのエリザベート・・・本当はあなたと離れたくはない
私は必ずあなたを迎えにいきます
エリザベート…もう、あなたのいない人生など私には考えられない───
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