Miracle of the rose | ナノ


▼ 003




豪華絢爛なベルサイユ宮殿の鏡の間



代々フランス王家の軍隊を統率してきたジャルジェ伯爵家の子息 オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ
ウェーブのかかった豊かな金髪とダークブルーの瞳を持ち、颯爽とした美しさでベルサイユにいる女性たちから熱い視線を送られていのも気にせず歩いていた




「あら、オスカル様・・・!」

「オスカル様よ!!」

「あぁ。いつ見ても颯爽として素敵・・・!」

「オスカル様、ラインでは大活躍だったんですってね!」

「何人ぐらい賊を斬りあそばして?」

「失礼」


オスカルは話を聞きたがる夫人達へ一言「失礼」とだけ言って友人であるアンドレと去っていった


「あぁん。もう。冷たいお方・・・」

「そこがたまらないのよ」

「あれでもう少し年が近ければ私ほっておきませんわっ!」




オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ
───あの人男よね?女の私より綺麗なんじゃない?

ワイングラスを片手に壁に寄りかかるとばあやが小声で「エリザベート様はしたないですわ」と言ってきた
コルセットでお腹締め付けられて苦しいし少しくらいいいじゃないと思うけどそんなことをばあやに言えば「エリザベート様はミィシェーレの代表出来ているのですよ?!」と言われるのがわかっているから大人しく姿勢を正した




「王太子殿下、王太子妃殿下おなりー!!」




マリー あの子はやっぱり王妃になるべき子なんだわ
あの子が入場した瞬間広間の空気が変わったもの。マリー立派になって、とちょっとだけ母親のような気持ちになって涙が少しだけ出た




「まぁ、美しい・・・」

「美しい・・・」

「まぁ、なんて気高くてお美しいお方」

「どうでしょう、あの軽やかで優雅な足取り…」

「さすがは、オーストリア皇女としてのお生まれ。気品があってお美しい」

「本当。少しもビクついたりなされないし、気高くて毅然としてらっしゃる」

「(あぁっ・・・皆が私を見ている───私の全てに目を見開き驚きの声をあげている・・・!!私の美しさに夢中で見惚れてしまっている!あぁ、素晴らしいわ・・・!!私は今ベルサイユの女王なんだわっ!!)」







「殿下!ダンスはいかが!」

「わ、私はダンスはやらないんだよっ。アントワネット好きに踊っておいでっ」

「まぁ・・・」



そんな方もいらっしゃるのね───と思いながらもルイに断られたため会場を見渡すと入口近くの壁でばあややノース伯爵夫人といるのを見つけたアントワネットはエリザベート達に駆け寄った




「シシィ!!」

『マリー。得意なダンスよ?殿下と踊らなくていいの?』

「殿下には断られてしまったの。そうだわ!シシィはもうオスカルとは話した?」

『オスカル?あぁ、オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ様ね。いいえまだよ?』

「なら一緒に行きましょう!オスカルは私の恩人なのよ!」




マリーが話してくれたオスカルとの出会いをきいて驚いた。マリー貴女普通に話しているけれどそれって命を狙われたってことよ?

でもオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ彼顔がいいだけじゃなくて仕事もできるのね
しかもこの世界では女性でなく男性───かなりおモテになりそうね


「さぁ行きましょ」と言い手を引いてくマリーにされるがままついて行くと人だかりがあったからそこにオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェがいるのだと分かった
オスカルにマリーが話しかけようとしたその時「ホホホホホッ!!」といういかにもプライドの高そうな女の人の笑い声が会場に響き渡った




「・・・・・」

『マリー?』




マリーが静かなのを不思議に思い顔を見てみると真顔で笑っている女の人をじっと見つめていた。
あぁ、マリーはああいった感じの人は嫌いだものね。でもマリー、あの方がどういった身分の方かわからない以上いくら王太子妃になったからといって上からいってはだめよ




「(まぁっ!なんなのこの女!!なんて高慢ちきな態度でしょうっ!凄い肉体美だけど何処か下品な女!!)」

『マリー、』

「はっ、ごめんなさい。行きましょ」











「オスカル!ご機嫌いかが?」

「ありがとうございます。妃殿下にもご機嫌のご様子お喜び申し上げます。」

「ふふっ。オスカル、こちらはエリザベート・ミィシェーレよ」

「ミィシェーレ?では、この方が」

『エリザベート・ミィシェーレと申します』

「オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェと申します。隣にいますのが私の幼なじみで同僚でもあるアンドレ・グランディエです」

『よろしくお願いいたします』



よろしくって言っても5日限定なんだけどね。
まぁマリーの処刑を回避しようと私が奮闘する限りはこのオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ、アンドレ・グランディエとは関わることになりそうね



「あれがミィシェーレ王国のエリザベート様」

「あそこだけまるで絵画のようね!」

「最初はフランス、オーストリアそしてミィシェーレの3国で同盟を結ぼうとフランスとオーストリアはしてたらしいわよ」

「え?!でも同盟は」

「ええ。エリザベート様を嫁がせたくなくて結ばなかったとの噂よ」

「でも仕方がないわ。ミィシェーレはヨーロッパ1の大国───それに国王はエリザベート
様を溺愛しているとのことだもの」


貴族達はエリザベートを見ながらそう話していたがマリーと話してるエリザベートは全く気が付かなかった

オーストリアの女帝であるマリア・テレジアは最初オーストリア、フランスそしてヨーロッパ1の大国であるミィシェーレを足した3国で同盟を結ぼうとしていたがミィシェーレはそれを断った
娘の1人をミィシェーレへ嫁がせエリザベートをフランスへ嫁がせようと画策していたマリア・テレジアは同盟を諦め娘のマリー・アントワネットをフランスへ嫁がせることにしたのだ──────

ミィシェーレという大国に娘を嫁がせることはできなかったが娘のマリーがエリザベート友人となってくれたおかげでオーストリアとミィシェーレは友好な関係を築けているし今はこのままでもいいでしょう
いざとなればエリザベートを息子の妻とできればとマリア・テレジアが考えているなどヴェルサイユで煌びやかな格好をしている貴族達は考えもしていない───



「ご覧遊ばして!アントワネット様がオスカル様に2番目にお声を!」

「私達も近寄ってお声をかけて頂かなくてわね!」

「噂話をしている場合ではないわね!」



マリーが「ねぇオスカル。」とオスカルと会話を続けようとしたその時「ホホホホホッ!!」またも響き渡る笑い声。そして声の主であるあの女性がマリーを見つめてた
宮廷育ちのお姫様であるマリーがこの状態に耐えられるわけもなく



「オスカル。あそこから私を見つめている人はどんな身分の人?」

「デュ・バリー伯爵夫人。王太子妃殿下がお心を止めるような女ではありません。」

「(でも、あんなに大勢の取り巻きに囲まれてまるで、自分が王妃だというような顔をしている・・・!どうして、皆あの女にペコペコしているのかしら!)シシィ行きましょう!!」

『え?ええ、』




会場を出ようとするマリーに手を引かれるためオスカルとアンドレには不格好な体勢で美しいとはいえないお辞儀を小さくしておく
もともと居た入口近くの壁にいたばあやに視線で合図を送りばあやにも着いてきてもらう
この状態のマリーは私一人では絶対に相手をしたくないから

会場を出るマリーを追いかける3人のおばさま方をみてオスカルが面白いことになるぞという笑みを浮かべているのに気づかなかった




「おい見ろ。デュ・バリー夫人をヘビかカエルのように嫌っているおばさま方の登場だ。これはひと荒れありそうじゃないか?」

「なるほど。デュ・バリー夫人の素性をアントワネット様が知った時、どんなことになるか・・・」









「なんですって!?国王陛下のお妾ですって!?」




ああ、この3人のおば様方もあの女性が嫌いなのね




「そうです。あの、女といえば下層階級の生まれで薄汚い下町で娼婦をしていたのよ?」

「娼婦って?」

「男達にお金で体を売る売春婦のことです。」

「(そんな卑しい女がなぜ、ベルサイユ宮殿に!?オーストリアのお母様はそんな女達には鞭をくれて感化院に放り込んでいたのに・・・!!)」



娼婦も知らないなんてテレジア様はマリーに一切そういったことは教えなかったのかしら?



「あの女わね、噂では自分の情婦を言いくるめてお金を出させると、そのお金で名門貴族のデュ・バリー伯爵を騙して、まんまと書類だけの結婚をし、そのあくる日には伯爵を毒殺してしまったのよ」

「毒殺っ!?なんて恐ろしい!!」


うーん。このおば様たちの言うことだけ鵜呑みにするのも良くなさそうだけど
───確かに陛下のお妾で税金を湯水のように使っているのは私もいいとは思えないけれど
それにしても・・・マリーの性格をこのおば様方よくわかってるわ───


「そう。そして、伯爵夫人になったあの女は何食わぬ顔で宮廷に出入りすると持って生まれた色気で国王をたらし込みお妾になってからは大臣を勝手に任命したりて」

「それはもう、贅沢のし放題。」

「国王殿下は娘の私たちの反対なんか御構い無しで、すっかりあの女の言いなりなんだから!」

「そう。みんながあの女のご機嫌伺いをするもんだから」

「女王のつもりで勝手気ままに振る舞って」

「くやしいっ!(なんて、なんて図々しい女・・・!!それで、私をあんな目で見つめていたんだわ・・・!)」

「でも、いくらあの女が権力をあって貴女にライバル意識を燃やしたって・・・」

「正真正銘の王族で、未来の王妃様の貴女に叶いっこないのよ?」

「せいぜい無視しておやんなさい!」

「そう!徹底的に無視してやるのよ!」


無視って───それはいくらなんでも不味いんじゃ・・・
国王陛下は彼女をかなり大切にしているみたいだし
あのデュ・バリー夫人もかなりプライド高そうだった

このおば様方もマリーに良い影響を与える存在には思えないわ───


「エリザベート様もしばらくベルサイユに滞在なさるのでしょ?」

『え?はい。5日間ですが滞在させていただきます』

「あなた様ともあの女は身分が違います!あなた様もあんな女とは関わってはいけませんわ!」



あぁ、ミィシェーレにいるお母様、お父様
エリザベートは面倒なことに巻き込まれてしまったようです・・・

革命を阻止できなさそうでもう挫けそうです・・・




この後アントワネットとエリザベートは会場に戻りオスカルを筆頭に様々な貴族とはなすも結局デュ・バリー夫人にアントワネットが声をかけることはなくアントワネットと共にいたエリザベートが声をかけることもなかった





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