Miracle of the rose | ナノ


▼ 038

エリザベートとフェルゼンがフランスへ戻りはや一年が経っていた

そんな中エリザベートの顔色がよくないことに気がついたフェルゼンが医者を呼んでいた


「どうだ」

「おめでとうございます。ご懐妊でございます」


その言葉に部屋にいたばあやとロザリーとシャルロットは歓声を上げた


「それはまことか!」

「間違いございません」


フェルゼンはばあやに手紙を出すから準備をするように指示をしロザリーとシャルロットにはオスカルたちにも伝えてほしいと言った
そんなフェルゼンの言葉にロザリーたちは部屋を出ていき医師も診察が終わったためまた後日診察にくると言って部屋を出て行った



「おとうちゃま。ごかいにんてなに?」


そんな愛娘の質問にフェルゼンはくすりと笑ってセシリアに妹か弟ができることを伝えた


「おねーちゃま!!」


母にとってのロザリーみたいな存在が自分にできることに喜んだセシリアにエリザベートとフェルゼンも笑った


「だがそうなるとミィシェーレに帰ったほうがいいのではないか?」

『今回はフランスで産むわ』

「だがミィシェーレの方が」

『ハンス。ここで帰っては私たちがフランスの医療を信頼していないことになってしまうわ』

「わかった。だが何かあった時のためにアングラード医師を呼べないか陛下にお伺いしてみる」


エリザベートが自害をしようとした時そしてセシリアを出産した時の主治医であるアングラードをフェルゼンは呼ぶことにした


『ハンスそれでは意味がないわ』

「だが君に何かあってからでは遅いんだ」

『だけど』

「エリザベート。君はミィシェーレの次期国王なんだ」


ハンスが言いたいことはわかる
女王となる私に何かあっては国民が国が困ることになり私だけの問題ではなくなってしまう



「おかあちゃま?」

『セシィ・・・わかったわハンス。アングラードをこちらに派遣してもらえるようにお父様に連絡をお願い。でもアングラードが来るのは私が出産する時でいいわ。もちろんその時にはフランスの医師にも立ち会ってもらう。それがアングラードを呼ぶ条件よ』


不安そうな顔で見るセシリアを安心させるように頭を撫でながら言った私の言葉にハンスは頷いて部屋を出て行った
私はこの子を国を国民を残して死ねない
でもフランスとのこれからのためにも私の出した条件は間違いではないはずだもの



















そしてしばらく経った10月のベルサイユでも大変なことが起ころうとしていた







この冷たい大理石の金や銀の彫刻で隙間なくうずめつくされた巨大な宮殿・・・
そして大勢の貴族たちの見ている前で繰り返しされる形式としきたりづくめの息の詰まる生活・・・

あ・・・・・

ここから抜け出して本当に好きな人たちにだけ囲まれて楽しく暮らせたら・・・





広大なベルサイユ公園の中に散らばる数々の宮殿の中でマリー・アントワネットが最も愛したのは
結婚の贈り物だとして夫ルイ16世より贈られた小トリアノン宮
わずか7・8の部屋しかない簡素な美しい離宮であった



そのことを聞いたポリニャック夫人は驚きながらも内心は歓喜した



「えーーーっ!?お・・・王妃様。小トリアノン宮にお引越しなるって・・・!?国王陛下をお残しして1?」


それはポリニャック夫人からした好都合なことだった
王妃を宮廷から隔離し自分の思うままに操る。それもうるさいオスカルや他の貴族になんの邪魔もされずに・・・・・

そんなことも知らないアントワネットはオスカルとポリニャック夫人に自分の考えを話した


「小トリアノンのまわりには素晴らしい田園風の庭園を作るわ・・・!水車小屋や農家も作ってお池も作って・・・あ、そのお池には本物のアヒルを浮かべるの!」


そんなアントワネットをオスカルは「なりませんッ!!」と止めた



「なりません王后陛下!!いやしくも一国の女王たるお方が宮廷を捨て政治をお捨てになるようなことがあってはなりません。フランス国民への裏切りでございます!!どうかベルサイユ急にお留まりくださりご自分の楽しみよりも国民の幸福をお考えください!!義務でございます!」


そんなオスカルの心からの叫びも虚しくポリニャック夫人はアントワネットを連れて行ってしまった
オスカルは話を聞いてもらうためアントワネットのことを呼び止めたがアントワネットにはオスカルのいうことがまったくわからなかった


オスカル・・・なぜ彼はいつも私が楽しもうとすると反対ばかりするのかしら・・・
彼にも一緒に来て欲しいのに・・・





そしてこのことはすぐに貴族たちへと広まった


「アントワネット様がトリアノンへ!?」

「このベルサイユをお捨てになって!」

「ポリニャック伯夫人はじめ少数のお気に入りの人しか出入りできないんですって!!」

「なんという侮辱!!」

「じゃあ私たちはどうなるの!?由緒ある家系の大貴族なのに!!」

「人を馬鹿にして!!」

「もうこんな宮廷なんか誰が出てくるものか!」

「ええ!!頼まれたってお断りですわ!!」








『え!?マリーがトリアノン宮へ引っ越しをしようとしているですって!?』

「オスカルそれは何かの間違いではないのか?流石のアントワネット様とはいえども流石にそのようなことは・・・」

「いや・・・今日直接アントワネット様からそうお聞きしたんだ・・・このままでは国民は王妃であるアントワネット様に裏切られたと思ってしまう」


いくらマリーが政治に疎いとしてもそのようなことは・・・
まさかポリニャック夫人が?
いいえ流石にそんなこと言われたら不審に思うわよね

マリーどうしてそのような愚かなことを・・・


「だがそのようなことをしたら国民だけではない。貴族も」

「ああ。すでにベルサイユ宮内は大変なことになっているさ」

「国王陛下はなんと」

「陛下は何もおっしゃらないさ。彼の方はお優しすぎるんだ」

『オスカル・・・』

「だがこのままにもしておけないだろう」

「わかっている。だがアントワネット様は私の話など聞いてくれないんだ」


今はポリニャック夫人の方がマリーの中で大きいのかしら・・・


「オスカル。国民の中にはすでにパンも買えないものも出てきている。そんな中でアントワネット様が引っ越しトリアノンの工事などしたら国民は王妃様であるアントワネット様を許さないだろう」

『オスカル。私たちはフランス国民を見捨てるつもりはないわ。だから今ミィシェーレの小麦をフランスへ輸入できないか国王陛下たちともお話ししているのよ』

「それは」

『もちろん私たちの手柄にしようだとかそんなことは考えていないわ。国王陛下であるルイ様が主となってやるということになっているのよ』

「だがそれでも限界はある」

『ええ』


でもこのことはきっとマリーの母国オーストリアにいるテレジア様にもいずれ伝わるはず
そうすればきっとテレジア様がお手紙をくださる
だからそれまではマリーをベルサイユに引き止めなければ





そう考えていた私の考えが甘かったということを知ったのはそれからたった一月後のことだった













1780年11月29日
オーストリア女帝 マリア・テレジア
肺硬化のため崩御

女性でありながら数々の戦争を戦い抜き
深く神を敬い
貧しい者のために小学校をつくり
賦役を減らし
家柄よりもひたすら才能をおもんじ
大オーストリア国民の高き心の支えであった偉大なる女帝マリア・テレジアは・・・
63歳の生涯を閉じた




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