▼ 021
「確か4年ぶりだったか・・・すっかり見違えた。すぐにはわからなかったほどだ」
髪を切り今までとは見違えるほど凛々しくなったフェルゼンをオスカルは褒めた
「オスカル近衛隊の連隊長になったそうだな。お前の噂はミィシェーレにまでも噂が聞かれるほどだ・・・恐ろしく腕の立つ若い隊長が近衛隊を指揮している・・・とな」
「フェルゼン!!お前ミィシェーレにいたのか!!」
「あぁ・・・色々あってな・・・」
エリザベートを思い愛おしそうに切なそうな顔をしたフェルゼンにオスカルは何かあったのだと感じた
「何か、あったの・・・か?」
「ミィシェーレに着いた日に自害しようとしたんだ・・・」
「それはエリザベート様がか!?」
「あぁ・・・なんとか助かったがつい最近まで4年間目を覚まさなかった・・・」
「それは・・・アントワネット様の、ことがあったからか?」
「あぁ・・・オスカル、私はもう何があってもエリザベートを悲しませたくない・・・アントワネット様が傷ついたとしてもだ」
「そうか・・・だがフェルゼン・・・」
「なんだ・・・アントワネット様を擁護するような・・・」
「違う。私もエリザベート様を愛している。」
「オスカル!!」
「エリザベート様を諦めることは私もできない!!お前とエリザベート様の仲をひきさこうなんて考えちゃない!だが想うことは許して欲しい」
「オスカル・・・」
「フェルゼンすまない・・・」
「ならばオスカル・・・お前には先に言っておく」
「なんだ・・・」
「エリザベートとは婚約を発表することにした」
「それは!!」
「私からそう国王様にお願いしたのだ。彼女が少しでも安心して過ごせるように」
「だが・・・」
「これが正解かは分からないがこれが1番いい方法だと思ったんだ」
「そうか・・・それにしてもフェルゼンとエリザベート様がロザリーと知り合いということには驚いた」
「ああ。私より先にエリザベートは会っていたみたいだが」
「そろそろ行くか」
「そうだな」
フェルゼンとオスカルがエリザベート達のいる部屋へ行くとそこにはカウチに座ったエリザベートの膝で寝ているロザリーがいた
「ロザリー!?」
『オスカル、泣き疲れてしまったみたいなの…もうしばらくこのままにさせてあげて?』
「しかしエリザベート、外に馬車を」
「ならば今夜は泊まっていくといい」
オスカルの提案には流石のフェルゼンも驚いた
先ほど自分にエリザベートを好きだと言ってきた人物の家に泊まれというのか?!と
「オスカル!!」
『フェルゼン、お言葉に甘えましょう?ロザリーを放っておけないもの』
「なら俺が馬車にいる人たちに伝えてくるよ」
『アンドレお願いします』
しかしそんなことがあったなど知らないエリザベートはあっさりとその提案に賛同した
「エリザベート・・・」
『フェルゼンごめんなさい・・・でも、ロザリーをこのまま放っては置けなかったの・・・ロザリーはもう、私の妹のような存在だもの』
ロザリーのためというならば仕方がないかとフェルゼンは納得することにした
「なら私にとってもロザリーは妹だな」
『ふふ、そうね』
「エリザベート様」
『オスカル今夜はお世話になります』
「はい・・・ごゆっくりなさって下さい」
『ありがとうございます』
オスカルにお礼を言っているとアンドレが呼んでくれたのかばあや達が部屋に入ってきた
「姫様!!」
「フェルゼン様!!」
『ばあや、ルカ』
「じい」
大きな声で呼びながら入って来るばあやに少し懐かしさを感じつつもロザリーが寝ていることを思い出してばあやに注意をした
『ばあや静かにしてちょうだいロザリーが寝ているの』
「それは・・・申し訳ありません。ですが姫様」
『オスカルがもう遅いから泊まっていくといいと言って下さったのよ』
「そうでしたか・・・」
『そうだわばあや。5人もお世話になるしお手伝いをお願いしてもいいかしら』
「もちろんでございます」
「なら俺が案内します」
『さっきもお願いしたのに・・・』
「いやばあちゃんがここで働いてるし気にしないでください」
『それじゃあ・・・アンドレお願いします』
「姫様くれぐれも」
『ばあや私の今の格好を見て頂戴』
これでどこかに行けると思えるの?とばあやをみるとそれでも信用できないのかハンスに私をしっかり見ておくよう伝えてから部屋を出ていった
『ばあやは私のことを信用しなさすぎよ』
「エリザベートが心配なんだよ」
ハンスは神妙な面持ちで私の名前を呼んだ
「エリザベート・・・」
『なに?』
「明日」
明日・・・それは私たちがベルサイユ宮殿へ行く日
ハンスが言いたいことはすぐにわかった
『ベルサイユに行くのよね・・・わかっているわ・・・・』
「エリザベート様・・・」
『大丈夫よハンス、オスカル。私はハンスを信じているもの。もうあんな馬鹿な事はしないわ』
今度は大丈夫。みんなが必死に守ろうとしてくれたこの命を断とうなんて1ミリも思わないから
「エリザベート・・・」
「エリザベート様・・・」
『大丈夫、大丈夫よ・・・』
自分に言い聞かせるかのように言うエリザベートにオスカルとフェルゼンは切なくなった
「…ん」
『ロザリー起きたのね』
「あ、私・・・すみません!エリザベート様!」
『ふふ、いいのよ。ロザリーは私の妹のような存在だもの』
「エリザベート様・・・」
『ばあやさんたちが紅茶を淹れてくれたのよ?温かいうちに飲んだほうがいいわ』
「はい・・・」
『ロザリー、貴女がお母様を殺した方を恨むのは当然のことよ。でも・・・貴女がそんな酷い人のことを考える必要は無いわ・・・ロザリー、貴女は綺麗な心を捨てては駄目よ・・・私は優しいロザリーが大好きよ。今は紅茶を飲んで心を落ち着かせてゆっくり寝るといいわ』
「はい・・・はい・・・エリザベート様・・・」
泣きながら紅茶を飲むロザリーの頭を撫でるエリザベートをオスカルとフェルゼン、アンドレは微笑ましそうにみた
ロザリー貴女は綺麗な心をそのまま持っていて・・・
私はもう綺麗な心なんて無いから・・・
だから、貴女だけは・・・
「エリザベートそろそろ寝たほうがいい・・・」
『えぇ・・・そうね・・・』
「ご案内いたしますわ。では、こちらに…」
『おやすみなさいオスカル、アンドレ、ロザリー』
「ごゆっくりなさって下さい」
『えぇ・・・』
「エリザベート」
『今行くわ』
先に部屋を出たハンスに呼ばれ私たちはこの家の使用人を長年やっているアンドレのおばあさまに部屋へと案内してもらった
「こちらのお部屋でございます。フェルゼン様は隣のお部屋でございます。では、ごゆっくりなさって下さいませ」
『アンドレのおばあ様ありがとうございます』
「そんなお礼なんてとんでもございません!!では、私はこれで失礼いたします」
そう言って去っていくのを確認したハンスが自分の部屋でなく私の部屋に入ってきた
「エリザベート」
『なに?』
「本当に大丈夫・・・」
『大丈夫よ。ハンス。私は大丈夫・・・だって貴方が側にいるんだもの』
「何があっても私を信じてくれ」
『えぇ。もちろんあなたを信じるわ』
「エリザベート」
『なに?』
「愛しているよ」
『私も愛しているわ・・・』
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