▼ 018
「エリザベート!連絡をもらって驚いたわ!」
「エリザベートゆっくりしなさい」
『お父様お母様ただいま戻りました』
「エリザベート?」
「どうしたのです・・・そんなまるで」
『どうもしませんわ。ばあや部屋には誰も通さないで』
「かしこまりました」
機械のように淡々と話すエリザベートを国王と王妃そして臣下と使用人達は心配した
あの優しい姫に何が起きたのか───と
自室に戻って手紙を書く
最後の手紙を───
それを真っ白な封筒に入れ私のイニシャルと薔薇が入ったシーリングで封をして私が小さい頃にお祖母様から頂いた宝石箱へしまった
大丈夫・・・一度は死んでるんだもん
2度目のこの人生今終わったっていいじゃない
本来ならこの人生すらおかしいんだから───
タンスから取り出したナイフを片手にベッドへ腰を下ろした
『大丈夫。痛いのは最初だけ・・・大丈夫・・・』
そう言ってナイフを振りかざし自身のお腹を刺した
本当は心臓の方が確実だけど上手くできなさそうでお腹にした
あー。切腹ってこれでいいだっけ?
これで本当に死ねるのかな・・・
でも感覚なくなってきたしうまくいったのかも・・・・・
やっと楽になれる
2人にはこのことが伝わらないようにしてあるから大丈夫
これで2人は結ばれるわ・・・
許してなんてくれないかもしれないけど・・・本当に今までごめんなさい・・・
さよなら・・・・・
わたしの大好きな人々・・・
わたしの愛したミィシェーレ王国・・・
さよなら・・・ハンス───
バタンッ!!大きな音をたて扉を開けたフェルゼンはベッドを見て固まった
「エリザベート・・・そんな・・・」
ベッドはエリザベートの血で赤く染まっていた
「ひ、キャー!!」
フェルゼンと一緒に来ていたばあやはフェルゼンの後ろから顔を出し真っ赤に染まっているエリザベートを見て悲鳴をあげた
そしてばあやの悲鳴を聞いて慌ててやってきた国王達もその光景を見て言葉を失った
「どうしたのです!!」
「なにがあったのだ!!」
フェルゼンはエリザベートに駆け寄りエリザベートを抱きしめた
どうしてこんなことを私には君しかいないのにっ
どうして・・・
目を開けてくれお願いだから───とフェルゼンはエリザベートへ言ったがエリザベートは目を開けない・・・
誰かが呼んだのか慌てて医師が入ってきた
王室のお抱えであるこの医師の腕はヨーロッパでも1番と言ってもいいくらいの人物だと医療を学んだドイツで聞いた
彼ならきっと彼女を助けることができるはずだとフェルゼンは医師の言う通りにエリザベートをベッドへ寝かせた
「エリザベートはどうだ!!助かるのか!!」
「どうなのです!!」
「傷はあまり深くはありませんが出血の量が多いで。この部屋へは誰も入らないようお願いいたします」
3時間後
「これで大丈夫でしょう・・・エリザベート様のお力が弱かったのが幸いでした。ですが熱が出るやもしれませんまた」
「あぁ・・・良かった・・・」
「しっかりするのだ王妃!!」
「安心して・・・力が抜けてしまいました・・・」
「陛下、王妃様・・・」
「どうしたのだ」
「このようなものが・・・」
国王と王妃が名前のそばにいるあいだいつもとエリザベートが大切にしている宝石箱の位置が微妙に違うことに気がついたばあやが宝石箱を開けてみるとそこにはエリザベートが書いたと思われる手紙があった
ばあやは国王さま達にお渡ししなければと国王に手紙を渡した
「こ、これはエリザベートのシーリングではないか!?」
「え?」
「姫様のお部屋にありました・・・」
手紙を読む国王の手紙を持つ手にだんだんと力が入っていく
「フェルゼンはどこだ!!」
「陛下!?どうなされ・・・「フェルゼン…彼奴とフランス王妃を私は許さぬ!!」
「陛下!!」
王妃は手紙を片手にエリザベートの部屋を出ていく夫の後を追った
謁見の間へフェルゼンが行くとそこには怒りで顔を赤くした国王と悲しそうな顔をした王妃が待っていた
「国王陛下お呼びで・・・」
「これはどういうことだ!!」
エリザベートの手紙を国王はフェルゼンに投げた
私のせいで本来愛し合う2人を引き離してしまってごめんなさい
ハンス・・・貴方は本当なら仮面舞踏会でマリーに出会い互いに惹かれあい決して結ばれてはいけないけれどそれでもマリーを心から愛するはずだった
マリー・・・貴女はハンスに惹かれていたのに私がいたから貴女はフェルゼンに思いを打ち明けることができなかった・・・
私はフランス王妃として頑張る貴女から愛する人を奪ってしまった
これからは、決して結ばれることのない結ばれてはいけない愛し合う2人が幸せになれるよう見守っています・・・
これを見つけた方はどうか私が自ら命をたったことをは2人には告げないでください・・・
お父様、お母様、お兄様方そして私の大好きな、愛するミィシェーレ王国
私はミィシェーレに生まれお父様とお母様の娘にお兄様方の妹にそしてミィシェーレの王女として生まれてこれて幸せでした
愛を込めて
エリザベート
「誤解でございます!!私はフランス王妃を何とも思ってはおりません!!」
「ふん・・・言葉だけなら何とでも言えるわ!!」
「誠でございます!!私はエリザベート以外を愛してはおりません!!」
「では、それが誠であるならばエリザベートが回復するまでエリザベートについていろ!!フランスへ連絡を送ることも許さぬ!!」
「陛下。私は回復するまででなくこれから先私が生きている限りエリザベートと共にあります!それで信じてくれとは言いません」
「その言葉に嘘偽りないな」
「ございません。愛するエリザベートに誓って」
「フェルゼンをエリザベートの部屋へ」
「かしこまりました」
フェルゼンが広間を出て暫くして第一王子であるラースが走ってきた
「父上!!エリザベートが自害しようとしたというのは!!」
「ラースそなたスイスにいたのでは」
「エリザベートの知らせが入ったので至急戻りました。シシィは!」
ラースが父である国王へエリザベートの容態を聞いていると先ほどのラースと同じように第二王子であるフェルナンドがやってきた
「父上!!」
「フェルナンド!そなたもか!?そなた今日は大事な試験がある日であろう!!」
「試験はまた受ければ良いのです!そんなことよりエリザベートは!!」
「私達もおります!!」
「カイルにアレンそなたらまでか!?」
「父上!エリザベートの容態はどうなのですか!!」
「今は安定しておる。とにかくそなたらは早く留学先に帰れ!!」
「父上!!」
いい加減うるさいと思った国王は大声で言った
「エリザベートには婚約者がついている!!だからそなたらはさっさと帰らぬか!!」
「こ、婚約者!?」
「婚約者ができたなど聞いておりません!!」
「そなたらは賢いが国王には向いてはおらぬ。そもそも、そなたらになる意志がない。ならばエリザベートが国王になるしかあるまい。エリザベートに無理をさせるのだ。だからエリザベートと相愛のものを選び婚約者にした。さぁ、そなたらは早く戻れ!!良いか、エリザベートまだ目を覚ましておらぬ。真っ直ぐ戻るのだ良いな」
国王の言葉に渋々といった様子で王子達は留学先に戻った
もちろんエリザベートの婚約者に会ったときは絶対に文句を言ってやると決めて───
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