▼ 014
3日後
マリーに会いに行くべくばあやに支度をしてもらう
ばあやは久しぶりのコルセットは通常より緩く締めてくれた
体調が戻ったばかりの私に気遣ってのことだろう
さすが仕事のできるばあやだなと思っていると先に支度を終えたハンスが部屋に入ってきた
「エリザベート、準備は」
『ハンスどうかしら』
くるりと回ってみせるとハンスは
「とても綺麗だ。ベルサイユに行かせたくないくらいに」
『ハンスがそう言ってくれるなら大丈夫ね!』
エスコートのために差し出してくれたハンスの腕に私は手をのせた
「さ、参りましょうお姫様」
『えぇ。貴方とご一緒になら何処へでも参りますわ。私の王子様』
エリザベートたちは馬車に乗りアントワネットのいるベルサイユ宮殿へと向かった
その頃ベルサイユ宮殿ではアントワネットがオスカルと話していた
「オスカル、ふふ・・・仮面舞踏会の件ノアイユ伯父人とメルシー伯にこってりしぼられてしまったわ。」
「アントワネット様」
「でも大丈夫よ貴方にお咎めがいくようなことはありませんから」
でもシシィと一緒に行けないのが残念だったわとアントワネットはオスカルに言った
「でも体調が悪かったならしかたないわね」
また今度の機会に誘えばいいんだもの
王太子妃となって幾年か経っていたがいまだアントワネットは天真爛漫な王女の頃のままだった
「妃殿下。ミィシェーレ王国王女エリザベート様がお越しです」
「まぁ!シシィが!?体調が良くなったのね!私の部屋にお通しして!」
「かしこまりました」
ああ久しぶりにシシィに会えるのね!!とアントワネットは心から喜んだ
───そしてこの後嬉しくも悲しい運命的な出会いをするとは思いもしなかった
「オスカル!シシィが来たのよ!」
「はいアントワネット様」
「オスカルもいきましょ!!」
「シシィ!」
『マリー!』
「会いたかったわ!!」
『私もよ!』
あれだけハンスと会わせるのが怖かったマリーだけどやっぱり会えるのわ嬉しいわけで
はしたないことだとは分かっているけど駆け寄って互いに抱きしめあった
「体調はもう大丈夫なの?」
『ええ。心配かけてごめんなさい』
「いいのよ!それよりこうして会えたことが嬉しいもの!」
『かなり前にフランスへは来てたのよ。でも色々することがあって会いに来るのが遅くなってしまって』
「今日来てくれたからいいのよ」
本当に会えて嬉しいわ!と前面に出してくるマリーが可愛くてもう一度ギュッと抱きしめてからマリーの後ろに控えてたオスカルに挨拶をした
『オスカル様もお久しぶりです』
「お久しぶりでございますエリザベート様。ご機嫌麗しゅうございか?」
『えぇ元気よ。そうだわ紹介するわねこちらにいるのはハンス。スウェーデンの貴族で私の大切な人なの』
「まぁ!!シシィの!?」
今までに恋なんて興味なかったシシィに!!とアントワネットは驚いた
そして挨拶をしてきたフェルゼンをみて時間が止まった気がした
「お初にお目にかかります妃殿下。私ハンス・アクセル・フォン・フェルゼンと申します」
「・・・・・・・・・・」
ハンスが挨拶をした瞬間ハンスを見たままマリーは黙ってしまった
「アントワネット様?」
『マリー?』
「妃殿下?」
「え?あ、えぇ・・・よろしくお願いします。フェルゼン・・・(こんなに胸がときめいたのは初めてだわ───でも、フェルゼンはシシィの大切な人・・・こんな気持ちを抱いてはダメだわ・・・でもこの人から目を離せない)」
アントワネットがフェルゼンに胸がときめくのも無理はなかった
ベルサイユの数々の舞踏会でフェルゼンはフランスパリに滞在中の外国人の中ではエリザベートについで好意を持って上流社会に迎えられる
控えめで無口で穏やかで───かといって陰気ではなく人間味に溢れた男らしいフェルゼンにベルサイユの若き貴婦人たちは胸をときめかせて噂話に花を咲かせる・・・
彼に熱心なラブレターを送る人妻もあるほどに
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