▼ 005
「あのはねっかえりめ!!」
カイルの声が夜の宮に響き渡る
「私たちが眠ったのを見すまして抜け出しやがった」
そんなカイルにキックリがお言葉遣いが・・・というがカイルにはその言葉は聞こえていない
「殿下!ティトもおりません」
「まったく!私がマリアと2人で過ごさず3人でいたのはなんのためだと思っているのだ」
「でもカイル様はマリア様のお願いには反対されたことないではありませんか」
そんなキックリの言葉にカイルは何か反論をしようとしだかその前にマリアが言葉を発した
『殿下そんことよりも早くユーリさんを見つけなければ。皇妃様が忍び込んだユーリさんを捕まえないはずがありません』
「そうだな。キックリ手勢を集めろ!馬は使うな街中を起こしてしまうからな。ユーリは皇妃の宮へ行ったのだろう」
カイルは捕まる前にユーリを連れ戻すように命令を出した
その頃皇妃の宮では忍び込んだユーリがマリアの読み通り皇妃の水に襲われ皇妃が雇ったズワに捕まり今にも殺されそうになっていた
「いやあああああ!!」
殺される!!ユーリがそう思ったその時ガッとティトがズワの肩に剣を刺した
「私の水盤が・・・!!」
皇妃の力を操る元でもある水盤がバシャと倒れた
「ユーリ様早く逃げて!」
ティトはズワと交戦しながらユーリに逃げるよう言った
ユーリはかけてあった服をとりティトと共に部屋を出た
「うれしーっ。これでやっと家に還れる!」
「よかったですねユーリ様」
ティトは笑顔でユーリのブーツを持って言ったが少し寂しそうな顔をして続けた
「でも僕はユーリ様にずっといて欲しいな」
「ティト」
「マリア様があんなに楽しそうなのを見たのは久しぶりなんです」
「マリアさんの?」
「マリア様ここ数ヶ月ずっと何かを悩んでいらしてあんまり笑ったりしていなかったんです。でもユーリ様が来てからはマリア楽しそうにしてらっしゃるんです」
マリアさんーー
こっちに来てくれてから一番親切にしてくれたっけ
皇子はムカつくとこもあるけどマリアさんは常に優しかった
マリアのことを思い出していたユーリが木製の格子で覆われた水路の上を通り過ぎようとしたその時
格子がカタリと揺れバキバキと格子を壊して下から現れたズワがユーリの足を掴んだ
「小娘逃がさんぞ」
「ひっ・・・は、離して!!」
ティトはユーリの足を掴んでいたズワの手にナイフをガッガッと刺しズワの手がユーリの足から離れた隙に外へ逃すためユーリを立ち上がらせた
「ユーリ様早く外へ!宮の外に出てしまへば皇妃様も騒動は起こせませんから」
頷いたユーリを宮の門の外に出せるところでズワがユーリの肩を掴んだがティトが間に入り止める
「ユーリ様早く外へ!」
「このチビめ。何度も邪魔しやがって!お前から皮を剥いでやる!!」
ティトはズワと交戦しながらユーリに顔を向けた
「ユーリ様。ユーリ様と出会えてよかったです」
「ティト!?」
ティトはユーリの身体をドンと押しズワに捕まりながらもユーリにお元気でと言ったのを最後に
皇妃の宮の門はユーリとティトを分つように大きな音を立てて閉まっていった
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