ヒッタイトの風と共に | ナノ


▼ 002



翌日



「大神殿で祭りだとよ」

「今の時期めずらしいねぇ」





「娘を引き出せ!」


神殿で たくさんの民衆・・・貴族・・・皇帝一家の見守る中・・・祭りが始まろうとしていた


「皇帝陛下ご着席」

「皇太子サリ・アルヌワンダ殿下ならびに―」


少女ーーーユーリは恐怖から涙を流していた・・・


「第3皇子カイル・ムルシリ殿下ならびに正妃マリア様ご着席」


!!! あの人!?

第三皇子とその妃って・・・

やっぱり皇妃の仲間だったんだ



少女がそう考えていると皇妃が杖をシャラ・・・シャラン・・・と鳴らした


「神々の中の神 偉大なる天候神よ」

「!!」


覆面をした男2人がユーリの体を折り曲げる・・・


「我は雨の恵みと大地の豊穣を願い 汚れなき処女を御元に送る」


カイルは様子をジッと見つめ
マリアは驚きから口に手を当てて呆然と様子を見る

皇妃はニヤリ・・・と笑い儀式を続けた


「貢物を受け取り どうかわが願いをかなえたまえ」




斧が上に上がりそのまま思いっきり振り降ろされる・・・とユーリが目をギュッと瞑り思った時


ビュッとカイルが杯を投げ儀式を中断させた


杯は男の手に当たり斧が床にささる



「な・・・何者だ!? 神事を邪魔するとは天候神を愚弄するか!」

皇妃の声が響き渡る


カタン・・・と音をたててカイルは立ち上がった


「・・・愚弄などととんでもない。義母上」


カイルはそう話をしながらマリアの腰を抱いて少女の元へと歩き出す


「!!」

あの人たち


「カイル皇子 高杯を投げたのはあなたか?いくら皇帝の皇子でも次第によっては許しませんよ!」


ヒステリー気味に怒鳴り散らす皇妃にカイルは物怖じもせず・・・軽く流して・・・


「まあ・・・お待ちを義母上。少し確かめたいことがありまして・・・」

「!」


カイルはユーリの顎に指をかけ顔を上げさせる


「・・・・・・・」

「ああ…やっぱりこの娘だ・・・」


カイルはニッコリと微笑んだ


「父上。天候神へのなのですがこの娘はやめて頂きたいのですが」

「・・・何故だ」

「この娘は昨日マリアが助けて侍女にしたのですがすぐに姿を消してしまいましてずっと探していたのです」

「なに?」

「マリアは娘が帰ってこないのを心配して昨日は寝れずに一夜を明かしました」

「マリアそれは誠か?」

『はい、陛下・・・・まさかこの子が生贄だとは思わずッ』


マリアは涙を流しながら皇帝に訴えかける


『陛下無理は承知ですッ・・・ですがどうか、どうか・・・ご慈悲をッ』

「神殿へはあらためてわたしから純潔の牝牛と牝山羊を100頭ずつ送らせて頂きます。・・・それで慣例ともあいますね? 父上。」


そんなマリアに心を打たれカイルの案にも納得したのか皇帝は頷き承諾するのであった


『よかったッ』


とマリアはユーリへ駆け寄った
皇妃は計画が失敗したためカイルを悔しそうに睨む


『貴女・・・名前は?』


マリアは小声で少女に名前を聞くと少女は小声でユーリと答えた


『ユーリよかったッ・・・・・ずっと探していたのよッ』


ユーリを抱きしめ耳元で話を合わせるように言う


『さ、帰りましょう?サラもイルもみんな心配していたのよッ』


マリアがユーリの肩を抱いて降りようとするとカイルがマリア肩を抱きユーリをサラに預けて会場を出て行く


「カイル」


皇帝の呼びかけに扉の前で止まり振り返るカイル


「どうかなさいましたか?」

「マリアを大切にするのはいいが少しは外の空気も吸わせてやるのだぞ」

「父上。それはわかっているのですが美しいマリアが攫われるのではと気が気でないのです。ですがそうですね・・・戦の時のみでなくたまに2人で街に出かけたりしてみます」


カイルはニコリと笑みを浮かべ出て行くのであった





prev / next

[ back to top ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -