▼ 043
ナイルの水が揺れた・・・・・
古代エジプトは国をあげて・・・・祝賀によっていた
八方に忍び寄る黒い影・・・・・
おお はるかなるナイルの流れ・・・
エジプトの女神イシスよ
御身の産みし娘を得るもの・・・・・
うるわしきわがエジプトを手中におさめん
「いたぞー!」
「ライオンがいたぞーーっ」
私はそんな声を船の上から聞いていた
『メンフィス・・・』
メンフィス・・・どうか無事でいてっ
「おいっ 船足の速い船を目立たぬよう川下へまわせ」
「はっ。アルゴンさま」
「あの娘を手に入れる」
「ええっ!ア、アルゴン様メンフィス王の花嫁をさらう?」
「そうだ!あの花嫁をかっさらってやる」
「とっ、とっ、とんでもありませんアルゴンさま!婚礼の席から花嫁をさらうなど、とんでもない!エライ事になります!おやめ下さい!」
「ふん・・・・・うるさいわ。わが国アッシリアの宮殿の女共にはもうあきたし・・・そろそろ新しい娘がほしかったところだ。あの美貌に加えてそちが言うように中々珍しい娘だ・・・興味がわいてきたぞ。ふふん・・・」
「しかしアルゴンさま。あの娘はイズミル王子も強く望みヒッタイトへ奪い去ったのをメンフィス王が炎の如く攻め込んで取り返したほど熱愛している娘です」
「知っておるわ」
「エジプトの国民はイシスの娘に心を捧げております!そ、その娘を!」
・・・・だから欲しくなったのだ・・・
あの娘はエジプト国民の守り神だ
「守り神が姿を消せば強大なエジプトは、はてどうなるか。あの娘を熱愛しているメンフィス王はどうするかーーーーーエジプト国内は混乱の渦と化す」
「では、アルゴンさまはエジプト征服をねらって」
決まっておるわ。常々気にかかっていた富めるエジプト
血がさわぐわ
このアルゴン様が引っ掻き回して ウブな王妃もろともかっさらってやる!
「すぐに船を川下へまわせ!」
女神イシスの産みし花嫁よ!
未来を見通し 賢いという美しく可憐な美貌を持つその身をひっさらって国でゆっくり確かめてやろう
さて・・・・・
『ここからではライオン狩りの様子が見えないわ・・・・・どうにかメンフィスの様子を見れないかしら・・・』
私・・・王の墓に・・・21世紀で・・・王の墓に入ったの・・・私・・・入ったの・・・それで・・・あれは、若い王の・・・若い王の墓だった・・・・ッ・・・あれはメンフィスの・・・
メンフィスの墓だった・・・若くして亡くなったって・・・
キャロルが以前言っていたことが頭の中で・・・・
だめ・・・やっぱりこんなところでじっと待ってなんかいられないわ
どうにか船からおりてメンフィスに何かあっても動けるようにしなきゃ
「マリア!」
『キャロルあなたも乗っていたのね』
「メンフィスがライオン狩りだけは許してくれたのよ!船の上ならイムホテップから何もできないだろうって」
失礼しちゃうわとキャロルは言った
ふふと笑った私にキャロルは眉を八の字にして聞いてきた
「・・・マリア・・・もしかして私が前言ったことでメンフィスが無事か不安なの・・・?」
『キャロル・・・もちろんそれもあるわ・・・でも本当に胸騒ぎがするのよ・・・・・』
「マリア・・・・・わたしも着いていくから一緒に行きましょ!」
『でも・・・船からどう降りれば・・・』
「こうするのよ!!」
とキャロルは船から飛んだ
『キャロル?!』
「さあマリアも!」
大丈夫よ!というキャロルの言葉を信じて私は飛んだ
「へっ、なんと」と声がした気がしたけど私はそれどころではなかった
「案じられるな王妃マリア。お気持ちは分かりますが花嫁がそのように動かれては・・・キャロル。メンフィス様とのお約束をお忘れですか」
『ごめんなさいイムホテップ・・・でも』
「マリア今回は大人しくしてましょ」
『そうね・・・』
「ククク・・・意外にも子供っぽい所があるのだな」
それにしても黄金の娘がもう1人いるとは・・・
「王を気遣われる優しいお心われわれも嬉しいが・・・」
『イムホテップ私・・・』
「マリアさま、ライオン狩りなどメンフィスさまにとって 何ほどのこともありませぬ」
「さあさあマリア。もう少しのご辛抱ですよ。ここで花嫁らしくメンフィス様をお待ちなさいませ」
『私・・・』
ナフテラさんが座らせてくれるけど不安な気持ちがなくなることはない
王妃として大人しくし待っているべきなのは分かってるけどでも・・・
「マリア・・・」
『キャロル私・・・』
「大丈夫よ・・・メンフィスは強いもの」
キャロルが安心させようと手を握ってくれるけど胸騒ぎは止まるどころか激しさを増している
「マリア。まわりをご覧なされ・・・各国の使者たちが 貴方をみておりますぞ」
そうだった・・・今ここには他国の使者もいるのに私・・・
今の行動は王妃として相応しくないわ・・・
初めて王妃になったわけではないのに
王妃たるものいかなる時も冷静でいなければ
「王妃として凛とした姿を見せたかと思いきやこのような子供っぽい一面もあるとわ・・・実におもしろい娘・・・」
「この娘欲しい」
「コブラに噛まれた王を助け・・・囚人の泥水を清水にかえ・・・ 民の心を一身に集めた神の娘」
「欲しい」
「その不思議な力をわが国にも欲しいものだ」
「欲しい」
私は王妃 アッシリア、ビブロス、シリア・・・・・
古代の歴史の中で勇名をはせた国々の使者たちが・・・
私の一挙一動を・・・・・
欲しい 欲しい 欲しい
ゾク・・・・・
なんて目をしているの・・・不気味だわ・・・
「ライオンが右へ回り込んだぞーーっ」
『メンフィス!』
「お若い王妃さま。ご心配ならばこの私が王のもとへお連れいたそう」
『あ、いいえ』
「なあに、このわたしが着いておれば大丈夫。さあ」
『い、いいえ、結構です』
またこの人・・・ アッシリアの使者
戦を好み残忍で血なまぐさい民族・・・
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